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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 13
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にするか。明日からはシェイバにそなえて猛特訓だぞ、なにせ俺の三五〇〇〇万円がかかっているんだ」
「ああ〜っ、思い出してしまったぁぁぁ」
「だが勝てば奴の三五〇〇〇万円を山分けだ」
「え? さっきはほとんど僕にくれるって言ってませんでした?」
「ええい、二年近く前に投降した作品の科白まで覚えておってからに」
「それもふくめて本日の刀会打ち上げの費用とか、ありがとうございます。お金、だいじょうぶなんですか」
「まぁ、京子に元・闇寺の宴会を見せてやりたかったとか、俺自身が飲み食いしたかったてのもあるしな。いつ死ぬかわからんのが人生だ、過ぎた蓄財なんぞしないで散財したほうが世は潤う、経世救民。世のため人のためだ」
「いいのかな〜、下流老人になっちゃいそう」
「いいんだよ、だいたい金に価値がある世の中が永遠に続くとも限らないしな。金銭の価値なんてものは幻だ」

 秋芳はふところから一万円紙幣を取り出してヒラヒラともてあそんだ。

「これは紙に模様を印刷しただけのものだ。特殊な印刷をしてはいるが、原価はまぁ一枚二〇円かそこらだろ」
「そうなんですか!?」
「そうだ。国が『これには一万円の価値がありますよ』と勝手に言っているにすぎない。だがみんながその幻を信じているから、この紙切れ一枚で一万円の買い物ができる。映画館で映画が五回は観られる。安い文庫本なら一五冊は買える。ゲームソフトを一本新品で買ってお釣りがくる。高めのワインをボトルで飲める。ビキニの女の子が五〇分間手コキしてくれる」
「最後のはいいですよ!」
「だがその幻が破れたらただの紙にもどる。ただの紙が原価の何百倍もする物と交換できるなんて本来ならありえないことなんだ。鰯の頭も信心から。人はあまりに長くその幻を信じ続けてきたから、それに疑いを持たなくなっている。呪にかけられちまったのさ」
「呪、ですか」
「そうだ、呪だ。金銭以外にも株や土地、貴金属や宝石類――。芸術作品なんてまさにそうだ。有名な画家の絵が競売に出されて一億円で落札されたとしても本当に一億円の価値があるわけじゃあない、だれかが一億円で買った。ただそれだけのことにすぎない」
「呪術の真髄は嘘……」
「まさにその言葉に尽きるな」

 ふたりのいる縁側からは枯山水の庭園をまたいで遠くの山野も見えた。
 薄が風になびいて秋にふさわしい風情をかもし出している。
 この趣のある風景を京子とともに見たい。
 そんな欲求に駆られた秋芳は来週にでも誘ってみることにした。
 金も土地も、地位も名誉もあの世には持っていけない。
 もしも魂やあの世というものが存在し、そこに持っていけるとしたら記憶。人の想いだけだろう。
 愛しい人との逢瀬。思い出は金では買えない。
 ケイタイで撮った画像を添えて誘いのメールを送る。よ
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