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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 13
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ーヨークでふたつのビルがくずれただけで世界経済に大きな影響が出る。
 ニューオリンズがハリケーンの被害に遭ったときには原油価格が高騰した。そのあおりでインド洋にマグロ漁に出かける漁船の燃料代もはね上がり操業中止に追いこまれ、日本の食卓にも影響が出た。
 バタフライ効果や風が吹けば桶屋が儲かるという言葉があるが、この世界で起きることはすべて密接なつながりがあり、世界規模の大事件が起きれば日本にも影響がおよんで個人の生活に大なり小なりなんらかの変化が起きる。
 ましてや一国が紛争状態になるなど、何万人もの人間が死ぬような大災害が起きれば経済活動はめちゃくちゃになり平穏な日常なんて崩壊してしまう。
 戦争になっても、小惑星が落ちてきても、まだコンビニに物があふれているようなフィクションがたまに存在するが、そのような作品はあまりにも非現実といえるだろう。

「んん? ちょっとまて。さっき食用式とか言っていたが、じゃあいま食べた料理の食材は……」
「察しのとおり天然物はほとんど入っていない。クエビコなどの呪術農園で生産されたものばかりで、羊は食用式の肉だ」
「この羊もどきは饕餮(とうてつ)か?豸(かいち)か?」
「太歳という食用式の肉だ」
「太歳て……」

 太歳。道教における架空の惑星や陰陽道の方位神とは別に中国の伝承にある生物で、これを食すと不老不死になれるという。別名を視肉、肉芝ともいい『山海経』や『本草綱目』に記される。
 食用式として作られたそれは無限に再生する桃色の肉塊で、周囲の気を吸収して欠損部を回復する、食べても減らない理想の食肉だった。

「あたしたち、タイプ・キマイラを食べたっていうわけ!?」

 思わず口元と胃のあたりをおさえて顔をゆがめる京子。さすがに吐き出すような粗相はしないが胃の腑から酸っぱいものがこみ上げてくるのはいなめない。

「さっき『鵺の肉でも食べたほうがマシ』て言ってたが、ほんとうに食べちゃったなぁ」
「鵺じゃなくて太歳。あとタイプ・キマイラじゃなくてタイプ・フードな」
「どっちも霊災じゃない! おなじよっ」
「霊災か、もはや死語だな。多軌子に将門の御霊が降りて東京、ひいては日本国中の霊相が変化してから霊的災害は起こらなくなったんだ。この手の生き物はいちように式神、式と呼んでいる」
「害がなくて安くて美味ければ無問題だ、ほかの食用式もためしに食べてみたいな」
「悪食ぃ……」
「いまはもう太歳しか出回ってないんだ。品種改良が進んでね、鶏肉太歳や魚肉太歳みたいに、これ一種ですべての食肉の味と栄養を再現することが可能になった」
「そりゃあ便利だな」
「まだ食用式が試作の段階だった初期の頃は、それこそ鵺も食べていたんだぜ。……なつかしいな、鵺バーガー。鵺肉で作った重厚感のある肉厚パ
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