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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第251話 日は沈む
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サニーは ある時期の記憶を喪失してたんだって言っていました。……父も母も養父母で、自分の昔の事は判らない、と言っていたと」
記憶の喪失。
それはリュウキ自身にも経験はある。失っていた時と現在。なぜ、あの時思い出す事が出来なかったのか 今でも判らないんだ。どれ程重要な事でも どれだけ大切な事でも 人間は喪失してしまう事がある。
「それでも、その時の気持ちは覚えていた、と言っていました。『とても楽しくて、楽しくて、育ててくれた両親には悪いと思いますが、一番かもしれません』とも言っていました。……それが、リュウキさんの、事……だったんですね」
その固く閉ざされた記憶の箱。それを開く為に必要な鍵が無ければ、開かれる事はない。僅かの隙間から 記憶の断片を引き出す事は出来ても、全てを思い出す事は出来ないんだ。
それを、よく知っている。 リュウキはレイナと言う存在が。最後の鍵があったからこそ思い出す事が出来たのだから。
サニーにとっての鍵は きっと……。
「リュウキさんのお話は沢山聞かされましたよ。話をしている時のサニーはとても楽しそうで、輝いていました。本当に笑顔だったんです」
「……(心の鍵は……リュウキくんだったんだ。凄く辛い事があった。心を守る為に 人は記憶を消す。消す事で、心を守ることができる、から……)」
話を聞いていたリュウキは ゆっくりとシウネーの傍へと近づいた。
その手にレイナを繋いだまま。
「……ありがとうレイナ。大丈夫。大丈夫……だから。傍にいてくれて、ありがとう」
「うん……っ」
そして、意を決する様にシウネーに訊いた。
「もう、大丈夫。……だからシウネー。教えてくれないか? サニーは…… 今、サニーは何処に……?」
「……わかりました」
もう……判っていた。
だけど、はっきりとその口から聞きたかった。
過去を乗り越える為に。……先に進む為に。そして 全てを知り、支えてくれる人達の為にも、立ち止まる訳にはいかないから。
「サニーは……………」
全てを告げられてから―――3日目。
冷たい北風が吹き抜けるコンクリートむき出しの校舎屋上。そこにリュウキは佇んでいた。
広がる街並、吹き抜ける風、ここから見える大空。
本当に不思議だった。心情1つで ガラリと景色が、感覚が、感じ方が全て変わってしまうのだ。 これはきっとまだVR世界でも表現する事は難しいだろう。人間の脳と言うのは、……人の心と言うのは、それ程までに難解だから。
この学校に来て 毎日が勉強だと感じていた。
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