辺境異聞 8
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を壊されちまった、みたいだ……」
「たしかに、そのようだな」
セリカの気が急激に衰弱しているのを、秋芳の見鬼が見て取った。
「霊魂の損傷は自然回復を持つしかない。だが、かすっただけだが、かなりやられちまったみたいだ……。私はもう魔術を使えないかもしれない」
霊魂の損傷は魔術師にとっては致命傷だ。霊的な感覚を使用する魔術において、霊魂――エーテル体の状態は大きな影響をおよぼす。魔術がまったく使えなくなるとまではいかなくても、なんらかの障害が残ってしまう可能性がある。
「この程度の霊障で大げさなことを言うな」
「大げさだと? 他人事だと思って……。そもそもおまえがあんなことを言うから!」
「あんなこと? とにかく俺は呪禁師だ。このくらいすぐに治せる」
「なんだと? あ、こらっ。どこを触ってるんだ!」
秋芳はセリカを抱きかかえると客室へ行きベッドに横たえさせると、フーラや下僕の吸血鬼と思われる召し使いたちの奇襲に備えて結界を張った。
「体を楽にして力を抜くんだ。なにがあっても力を入れてはいけない」
「…………」
自信に満ちた秋芳の言葉に、セリカは黙ってうなずく。
秋芳は左手を胸にあて、右手の人差し指でゆっくりとセリカの頭の百会穴を点いた。
「あ……」
熱い気が頂門から下りてきて、セリカの体がかすかに震え、吐息が漏れる。
秋芳は指をすぐに離すと次は百会穴の後ろの後頂穴を点く。
「あっ、んっ……」
さらに強間、脳戸、風府、大椎、陶道、身柱、神道、霊台と続けて点き、湯が沸くよりも短い間にセリカの頭から背筋を走る督脈の三〇大穴をすべて順番に点いた。
「あっ、ああっ……くっ、んっ」
さらに顔から胸、腹へと続く任脈の二五大穴を、陰維脈の一四穴、陽維脈の三二穴を順番に点く。
「あ、あぁん……」
さらにくるぶしかの内側から喉にいたる陰?脈、くるぶしの外側から耳の後ろの風池穴にいたる陽?脈、足から胸にいたる衝脈を次々と点く。
「あっ……ああっ……んっ」
最後に残ったのは腰のまわりの帯脈。章門穴をはじめとする帯脈の八つの穴を点く。
「ああっ……あっ……あ、あぁん……ひぁあっっ!」
セリカの奇経八脈をすべて点き終わった。
「ひあっ……やあぁ……かふっ………あぁっん……くぅうんっ……はふぅうっ!」
痛いやら痒いやら、セリカは今まで感じたことのない摩訶不思議な感覚にとまどい、唇を噛みしめて耐えていた。そのひたいからは汗がしたたり、細い眉を伝って落ちる。
秋芳も通常の指圧などとは異なる、内力を込めた点穴治療に汗を浮かせるが、指先の動きに寸分の狂いもなく、セリカの治療を続けた。
ウサギ肉と玉ねぎのシチ
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