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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 12
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 二〇一X年。某月某日、総理大臣官邸。
 定例の閣議を終えた首相がひと息ついていると声をかけられた。

「いやいや福富首相、お疲れさまです」

 福富幸寿(ふくとみゆきひさ)。それが首相の名だ。
 まことにめでたい字面なのだが、青黒い不健康そうな顔に貧相な禿げ頭と、まるで火星の貧乏神のような容貌をしていて名前と似つかわしくない。
 実際、彼が首相になってからはあいつぐ増税や海外へのばらまき政策が目立ち、多くの善良な日本人にとっては貧乏神のような存在だった。

「あー、なんだね国交相くん」

 声をかけてきたダイエット中のジャバ・ザ・ハットのような人物は首相の派閥の子分である国土交通大臣だった。彼は私立大学の不正入学を斡旋して一件につき一〇〇〇万円の謝礼を受け取ったと報道されている。さらに彼の弟が経営する不動産会社は安値で買った原野を五〇倍の価格で新幹線用地として売りつけたことまで判明している。つまり大臣である兄から会社経営者である弟に事前に計画が漏らされていた疑いがあるのだ。
 その近くで電子タバコをくわえている総務大臣はゴルフ場の会員権を乱売して詐欺罪で告訴された会社から五億円の献金を受け取っていた。大臣の事務所もその会社から無料で借りているうえ、秘書の給料まで支払わせている。
 
(しかし我ながらたいした顔ぶれだよねぇ)
 
 首相以下、内閣を構成する閣僚のほとんどが大小さまざまな汚職事件に関与し、国民から批判されている。
 批判される理由は汚職事件だけではない。
「米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引くってことは奴隷の子孫だよ」「親に行けと言われて進学しても、女の子はキャバクラに行く」「巫女さんのくせに生意気な」などなど……。今年に入ってから発せられた党員からの暴言失言の数々である。
 資料の歯舞(はぼまい)群島を読めず「はぼ…えー、なんだっけ?」と記者会見で言った北方領土担当大臣もいる。
 この福富内閣。ことさら汚職議員や舌禍議員を選んで大臣にしているわけではないのだが、結果としてそのような人事になってしまったのだ。「清廉な人を大臣に」などといっていたら、この国の内閣そのものが成立しなくなってしまう。
 平然と賄賂を受け取り、平然と嘘をつき、平然と秘書や運転手に罪をなすりつけ自殺させる……。
 そのような人間でなければ、この腐臭に満ちた権力の世界で生き残れないのだ。と、腐臭を放つ権力者たちは信じきっている。

「消費税一〇パーセントへの引き上げ、思いのほかスムーズに通りましたなぁ」
「まあねぇ、消費税は社会福祉に使う。したがって消費税の増税に反対する者は福祉の敵だ。という論調にもっていったら、たちまち反対の声が低くなってしまったからねぇ」
「そんなお粗末な論法が通用するとは、正直思いませんで
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