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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 12
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の震度計は震度一の微震すら感知していないというのだ。
 首相たちや気象庁には知覚しえないことだったが、たったいま起きた振動は地震ではない。東京の霊相が変化したことによって生じた大規模な騒霊現象だ。
 視える者が外を見れば東京の霊相が一変したことに気づき、驚愕したことだろう。
 いや、外を見るまでもない。
 荘厳、峻厳、圧倒的で神々しい気が天より降りそそぎ地よりあふれている。
 三度目の大祓、天゙地府祭によって神が降りたのだ。
 祟り神にして東京の守護神たる存在が、地上に降臨したのだ。

「どうなっとるんだい、局地的地震てやつかい?」
「さぁ、なんとも言えませんが、さすがに総理官邸だけが揺れるような地震はありえないかと」
「それじゃあこまるよ、可及的速やかに被害状況と原因をしらべてもらわないと」

 この首相にしては精力的に行動したほうだろう。警察や消防関係に連絡し、各地の被害の有無をしらべさせる。

「もしや某国の地震兵器では?」
「地震兵器って……、それを言うならまだ核実験のほうが信ぴょう性があるんじゃないかね」
「某国のヤクザはハリケーンを発生させる気象兵器をもっているとか――」

 臨時の非常災害対策本部にしては緊張感に欠ける会話が飛び交う。

「腐っているな」

 だれかの発したそのひとことに政治家たちの雑談は一瞬で静まりかえった。
 いつの間にそこにいたのか、黒い巫女装束に身をつつんだ赤毛の少女が冷ややかな目で大臣たちを見回している。声の主は彼女だ。

「…………ッ!?」

 君は誰だ、と誰何の声をあげようとした警護官の口が水揚げされた魚のように半開きのまま固まる。赤毛の少女の輪郭が光で縁取られているように見えたからだ。
 霊気が光を放ち、その周りをただよっている。霊気の光を浴びた赤毛は燃え盛る炎のようで、周囲を睥睨する瞳は神代の宝玉を思わせた。
 (かぎろひ)の姫巫女。
 古典や文語的表現に縁のない警護官であったが、少女のまとう神気に打たれ、がらにもなくそのような言葉が脳裏に浮かんだ。
 そう、神気だ。
 見鬼の才をもたない凡人にすら視えるほどの強力な霊気。神威のごとき気をまとっている。

「だ、だれだね君っ! ここをどこだと思っているんだ」

 たとえ性根が腐っていようと脆弱というわけではない、海千山千の政治家だ。肝の据わった経済産業大臣が少女に指をさしてつめよる。

「無礼者め、はなれろ」

 少女の声ではない。いつの間にかその場に姿を現した二十歳前後の青年――モッズコートにジーンズ姿。跳ね回る髪を後ろで束ね、精悍な面構えと克己的な雰囲気の持ち主――の口から漏れたそのひと言に大臣が動きを止め、数歩後ずさる。

「こちらにおわすは畏れ多くも新皇陛下、相馬多軌子
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