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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 12
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力になびかない、自分たちとは異なる価値観の持ち主がいると、彼らは気味が悪くてしかたがないのだ。
 おたがいに政治を商売にしている者がいれば「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」と親しく気安く挨拶できるというものだ。
 だが陰陽師、呪術者相手は勝手がちがう。
 天体観測や暦の作成、卜占などに従事していたいにしえの陰陽師たちは国家権力の一部であり、たんなる公務員にすぎなかった。
 しかし現代の陰陽師たちは甲種≠ニいう、まごうことなき呪術を駆使する異能者であり、彼らの存在なくしては霊災に対処できない。
 彼らには彼らの価値観があり、世俗から一線を画す。
 俗世界に生きる権力者たちにとって、なんとも薄気味の悪い目の上の瘤なのだ。

「陰陽法改正の件だが、どうにもこまったものだよねぇ。なんとかならないものかな」
「なんとかと言われましても、世論の動きは政治力でどうにかなるものでもないですからねぇ……。そうだ、とりあえず名目上の権威だけあたえて権限はそのまま。というふうに取り繕うのはどうでしょう」
「どういうことだね?」
「陰陽法改正にともない、陰陽庁から陰陽省へと格上げします。この時点で体裁はととのえられます」
「ふむふむ」
「しかも省になると民選の議員が大臣になるので、現在のように倉橋長官をトップにした陰陽庁よりも隠しごとがしにくい組織になることでしょう。我々としてあつかいやすくなるのでは」

 陰陽庁、ひいては呪術界の隠蔽体質はつとに有名である。
 極端な話、陰陽庁が白を黒と言えば最終的にそれを通すことができるのだ。もちろん多少の工作が必要となるが、ほかの省庁では不可能なことですら陰陽庁なら、呪術界では可能だ。
 なぜなら呪術のことは呪術者にしかわからないから。
 そしてわからないものにこそ陰陽庁のみがもつ独自の威厳≠ェ絶対的に作用する。それは世俗のいかなる権威、権力をも凌駕する畏さだ。

「しかし選ばれたからといってあんな魔窟の責任者になりたがる人なんているのかねぇ」

 自分たちが富と権力の伏魔殿にうごめく亡者であることは棚に上げて首相は首をかしげた。

「のこのこ出向いてごらんなさいよ、洗脳されて魂を奪われてしまうよ、くわばらくわばら」

 首相とて甲種言霊の存在は知っている。呪術者がその気になれば一般人など簡単にあやつることができるのだ。
 そのため陰陽師が諸外国との外交の場に出ることは禁じられている。交渉相手に術をかけ、日本にとって有利な方向にみちびくのを防ぐためだ。
 また陰陽師の海外旅行も原則として禁止である。呪術犯罪捜査部が存在する日本国内ですら呪術をもちいた犯罪が後を絶たない。まして呪術に対する備えのない(できない)外国に呪術者を軽々しく出国できるわけがない。
 甲種言霊で人をあやつり、
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