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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 12
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ありさま。日本の皇室はヨーロッパの王室にくらべて質素だと言いますが、あんなのに年間七〇億円近い皇室費用が血税から出されていたと思うと腹が立ちますな」
「宮内庁費も合わせるとさらに一〇〇億ほどかかっているよ。もっともそれでも国民ひとりあたりの負担は一三五円程度だし、質素も質素。大清貧だよ」
これは片眼鏡の放蕩者――夜叉丸の言だ。彼がまだ大連寺至道という人であった頃、宮内庁の御霊部で部長をしていたこともあり、そのあたりの事情にくわしい。
「それに御一新以降じつに一世紀半ぶりの大政奉還という歴史的な場面をこの目で拝見したくてね、そこで駆けつけた次第ですよ。――それはそうと、まぁ凄惨なことになっておりますなぁ」
法源と呼ばれた青年は大臣たちの酸鼻を極める骸を目にして軽く眉をしかめる。
これには多軌子も後悔に表情をゆがめる。
「いささか軽はずみだったと悔やんでいるよ。旧体制の支配者たちには前帝といっしょに民衆の前で新時代のはじまりを認めさせ、宣旨を読ませるつもりだったのに」
「過ぎてしまったことをいまさら悔やんでもいたしかたありません。どうせこのような醜悪な輩、いずれは処断することになっていたでしょう。……私の術で少しのあいだ生きているふりをさせることが可能ですので、宣旨を読み上げるさいはおまかせを。それとこのような頑固者には――オン・デイバ・ヤキシャ・バンダ ・バンダ・カカカカ・ソワカ――法源君、呪を解いてくれ」
「あいよ」
夜叉火輪印を結び真言を唱えた夜叉丸の指が亡羊と立ちすくむ警護官の額を軽くなでた。
目に意志の光がもどる。
「君の主はだれだい?」
「多軌子新皇陛下。ならびにその麾下の陰陽師の方々であります! みなさまのためなら犬馬の労をいといません!」
「よろしい」
ただしそれは先ほどまで持っていた自分自身の意志ではない。夜叉丸によって上書きされた偽りの意志だ。
「脳に三尸を憑かせました。これで彼は頑迷と妄執から解き放たれ、新皇陛下の忠実なる僕へと生まれ変わりました」
三尸というのは道教に由来する人の体内に棲む三匹の妖虫で、六〇日に一度の庚申の夜に人の眠っているときに体内から抜け出て、その人の罪を天帝に告げるという。
この伝承をもとに夜叉丸の創造した三尸蟲は寄生した相手を操作することができるのだ。
武力による政権奪取で人々が従うとは限らない。政治の中枢にいる官僚や役人がボイコットする可能性も見越して、このような式神を用意してあるのだ。
フランス。パリ。AM7:00。
「Oh! Mon Dieu!!」
エッフェル塔のとなりに出現した巨大な少女の幻影に人々は驚嘆の声をあげた。
緋色の髪をした少女は多軌子と名乗り、人々に日本の新生を宣言する
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