辺境異聞 7
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爪を振るったヨーグの脳天に秋芳の刃が振り落とされる。
「――ッ!?」
速い。
一瞬どころか半瞬の速さで秋芳が動いたのだ。
とっさに上げた両腕でガードしなければ、頭を断ち割られていただろう。
秋芳の血肉を吸うはずだった二本の腕が、血の糸を垂らして床に転がり落ちた。
「GUGAGUGAAAaaaッッッ!!」
痛みと怒り、驚愕の入りまじった雄叫びをあげて喉笛に噛みつく。たとえ鉤爪が失われても鋭い牙が 残っているのだ。
だがそれよりも速く秋芳の刃が閃いた。
袈裟斬り、右胴、右斬上げ、逆風、左斬上げ、逆胴、逆袈裟。
顔面、首、胸への突き。
一瞬七斬三突。
七つの斬撃と三つ刺突をほぼ同時に℃けたヨーグが全身から血を噴き上げる。
「なん……、だと……?」
【タイム・アクセラレイト】によって加速した術者は効果が切れた後に魔導第二法則によってズレた時間の分だけ帳尻を合わせるため今度は時間が減速する。
では先に減速魔術をかけた場合はどうか?
減速効果が切れた後に加速状態になる。それでも前述したように【タイム・アクセラレイト】だけではヨーグの速さにわずかにおよばない。
そこで秋芳は圧縮された時間が解き放たれると同時に、あらためて【タイム・アクセラレイト】を唱えたのだ。
いわば一種の重ねがけである。
数倍速の、さらに数倍。
これによりヨーグを上回る速度を得られたのだ。
減速状態の時はまともな回避行動ができないため、見鬼による気の流れを読む【先読み】に集中。
致命傷になるようなヨーグの攻撃を見抜き、鉄布衫功でひたすら防御に徹して反撃の機会を待っていたのだ。
試みは見事に成功。相手の速さを逆手にとって真っ向からの交差法で斬り飛ばした。
セリカのほうを見れば、こちらも終焉を迎えようとしていた。
ヨーグの敗北に不利と判断したフーラが霧に変じて逃走しようとしていた。
だが、遅い。
すぐさまセリカの追撃を受けるだろう。
そう思って静観を決め込んでいると、なんとセリカが膝をついたではないか。
そのままくずれ落ちるように倒れ伏してしまう。
「おい、どうした!?」
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