辺境異聞 7
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数百年も経てば歴史は移り変わり、王朝は興亡する。
それにかかわる人々の運命も変転する。
どの時代にもすぐれた芸術家や学者があらわれて、書画を描き、誌を吟じ、楼閣を建て、音楽を奏でる。
それらを鑑賞するだけでも飽きない。
有名な仙人は皇帝や王といった時の権力者をからかったり、妖怪をやっつけたり、古い美酒を飲んだりして楽しむ。
春は桃や牡丹の花を見て、夏は滝のそばで涼しく過ごし、秋は紅葉を見物し、冬は雪景色を愛でる。
退屈などと無縁に、永遠の生を大いに楽しむのだ。
羅公遠という仙人は唐の玄宗皇帝を月へつれていった。いつどこで生まれたか誰も知らないが、容姿は十代の少年のようで、天下を旅して酒と音楽を楽しんでいた。
などという話がいくらでもある。
「――修行をつんで仙人になれば不老不死となり、霞を食べて生きていける。たった二、三〇〇年生きた程度で人生の重さ苦しさに耐えきれないだの、血を啜らなければ生きていけないだの、吸血鬼というのはなんとまあ、陰気でつまらない連中だ、修行が足りん」
「……口の減らない人ね。ヨーグ、遊んでいないでそろそろ片づけてしまいなさいよ。この女、手ごわいの」
「先輩からの注文だ。そろそろ終わりにしようか、騎士爵どの」
「《魔力よ・集いて剣となれ・其は至高の利刃なり》」
秋芳の手にマナが凝縮し、尖形状の光刃が形成される。
魔力を武器の形にする【フォース・ウェポン】だ。
同様の魔術に錬金術の形質変化法と根源素配列変換を応用することによって、なにもないところから武器を生み出す【隠す爪(ハイドウン・クロウ)】 というものがある。
ひとたび錬成すればマナの消費のない【隠す爪】とはちがって、維持している限り常にマナを消費する【フォース・ウェポン】ではあるが、基本的な威力が高いことにくわえて、純粋なマナによって作られた性質上、銀や魔力の宿った武器でしか傷つけられない高レベルのアンデッドや魔法生物にもダメージを与えることができる利点がある。
「なるほど【イノセント・クローズ】が防ぐのはあくまで魔術のみ。純粋な魔力の刃ならたしかに我が身に通じよう。だが、あたらなければ意味はない。人の身で獣の動きについてはこれらまい」
「《我・時の頸木より・解放されたし》」
「悪あがきを……」
剛毛におおわれた獣の顔にもはっきりとわかる冷笑を浮かべ、ヨーグが突進した。【タイム・アクセラレイト】によって驚異的な加速を得たとしても、焼け石に水。
地力の差が大きすぎて、魔術をもちいてもヨーグの、ヴリカラコスの獣速に追いつくに至らない。
もう、一歩。いや、三歩ほど足りない。
魔力の刃が振り落とされるより前に、鉤爪が秋芳の身体を引き裂く。
一瞬の後におのれの爪が血肉に沈む感触を想像しつつ、鉤
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