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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 7
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しい容姿と妖艶な踊りでヨーグを魅了し、暗黒神への信仰を勧誘した。
 終わりの見えない殺戮の日々に心を病んでいた者が闇への誘いに屈するのは、実に容易いことであった。
 暗黒神への供物と称し、反逆者や捕虜を串刺しにしたり、エリサレス教の信徒を聖堂にあつめて火を放ったりと常軌を逸した行為に走るヨーグ。
 さらにヨーグは実の娘であるヘルギを暗黒神への生け贄にし、妻であるソティーと共に吸血鬼化しようと試みたのだが、ソティーはそれを強く拒んだために吸血鬼化をまぬがれ、人としての生をまっとうできた。
 ソティーは儀式の前から精神が不安定になり、以前のヨーグと暗黒神を崇拝するようになったヨーグを別人と認識することで精神の安定をかろうじて保っていた。地下室にあった狂気を孕んだ日記はその時に書かれたものだ。
 ウンキという人物は最初から存在しない、フーラの筋書きの中だけの人物。倉庫にあった肖像画はヨーグの肖像画のキャプションを変えただけのフェイク。



「夜の美しさと芳しさをはじめて知ったあの時の気持ちは格別だった。おまえもすぐに知ることになるだろう」

 完全に勝利を確信しているヨーグは自身の境遇を饒舌に語った。自分が負けるなどとは露にも思っていない。

「んん? 半世紀ほど前? レザリア王国との戦いと言ったが、奉神戦争が終わった後も連中は攻めて来たのか」
「いいや、奉神戦争のまっただ中。より正確には四〇年前のことだ」
「なんだと?」

 ヨーグはどう見ても五十歳よりも上には見えない。奉神戦争の時にはまだ子どもだったはずだ。

「吸血鬼になった時点で老化は止まる。ということは……」
「ふふふ、この私こそが寡兵でレザリアの大軍を撃ち破ったと言われる『先代』さ」

 何十年も歳をとらずに生活していれば怪しまれる。頃合いを見て亡くなったことにして、父から家督と名前を継いだ息子としてヨーグはこの地に君臨し続けているのだ。

「では少数の兵でレザリア軍を撃ち破ったという話にもいささか語弊がありそうだな」
「そうだな、たしかに少数ではあったが兵ではない。あの侵略者どもを殲滅したのはこの私とフーラのふたりでだ」
「たったふたりで軍隊を殲滅!?」
「この力をもってすれば、鈍重で脆弱な人間を狩ることなぞ稲穂を刈り取るよりも簡単だ」
「あの時の戦いはとても楽しかったわ」

 セリカと刃を交わすフーラが話に入ってきた。

「二〇〇年もの長い歳月を夜のしじまと共に静かに暮らしていたのに、いきなり合戦の檜舞台に立てたのですもの」
「あの人狼化、ヴリカラコスとか言ったね。あんたはヨーグみたいに獣にはならないのかい」

 光闇の刃を真銀の剣で打ち払いながらセリカが問う。

「わたしの氏族(クラン)はヴリカラコスではないの。ああいう
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