辺境異聞 7
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グの超高速に追いつくには、たんに足を速くしたり機敏になるといった【フィジカル・ブースト】で上昇できるようなレベルの速さでは足りない。これに対抗するには【タイム・アクセラレイト】による爆発的な加速が必要だ。
(と、いきたいところだが、【タイム・アクセラレイト】はリスクがでかいしな)
【タイム・アクセラレイト】。対象に流れる時間を加速させ、高速で動くことができる。
ただし、術が切れると魔導第二法則によって加速させた分だけ減速し、世界の辻褄を合わせる。
速くなったぶん、遅くなってしまうのだ。
当然のことながらそれは致命的な隙となり、帝国軍の中では自殺魔術などと揶揄されることもあるくらいだ。
(だが使いどころを見誤らなければ決定打となる。……ん? まてよ、この手は使えないか?)
一計を案じた秋芳が相手に悟られないよう、小声で呪文を唱えた。
「エイイッ鈍足、鈍足ゥ!!」
黒い疾風が部屋中を駆け、空気のこすれ合う摩擦音が響く。
床を走り壁を跳び天井を蹴る、前後左右どころか上下からも繰り出される全方位空間攻撃に秋芳の衣類はぼろ雑巾のように散り散りになり、全身に血が滲む。
「……妙に硬いな、なにか防御呪文でも唱えたか?」
両手で正中線をガードし、甲羅に閉じこもる亀のように守りを固めた秋芳の全身は鉤爪による切り傷だらけだが、最初に腕に受けたよりも軽い負傷ですんでいる。
「無駄な足掻きを。どこもかしこも傷だらけ、だが死には至らない気分はどうだ? 出血多量で死ぬのは時間の問題だぞ。獣の速さと力を備えたヴリカラコスである私に勝てる人間なぞ存在しない」
(まだだ……。もう少し、時間が必要だ)
鉄壁の守りを維持したまま口だけ動かす。
「……おまえたちが俺たちをだしに賭けをしたように、俺たちもおまえたちである賭けをした」
「ほう、どんな賭けをしたのかね?」
「あんたら二人の関係さ。父と娘を演じていたが、実際のところはどういう関係なのかとね。本当に親子なのか、父と娘なのか、母と息子かもしれない、あるいは祖母と孫、祖父と孫娘、それともまったくの赤の他人なのかってね」
「フハハハハ! 知らずに人の生を終えるのも哀れだろうから教えてやる。私たちは――」
平原、山地、河川、湖、街道、市街地、海原――。
今からおよそ半世紀ほど前、アルザーノ帝国とレザリア王国は各地で激しい戦いを繰り広げていた。
世に言う奉神戦争だ。
時に攻め、時に退き、時に勝ち、時に負ける。
一進一退の攻防がどこまでも続く。
それはここ、嵐が丘でも同様だった。
いつ終わるとも知れない長引く戦いにヨーグが心を荒ませていた時、漂泊民たちがやって来た。
その漂泊民たちの中にいたフーラは美
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