第四章
[8]前話
「しかしだ」
「この度はですね」
「実際に狸を食う」
「そして狸以外の獣も」
「食う」
そうなるというのだ。
「それでいくぞ」
「わかりました」
「何、獣も食えぬことはない」
義重は笑ってこうも言った。
「本朝では今はあまり獣は食わぬがな」
「魚や鳥は食らいますが」
「獣はな」
「どうもですな」
「しかし食えばよい」
山の民達が捕らえて持って来たそれはというのだ。
「そうして毛皮もだ」
「使いますか」
「革も何かと使い道がある」
それでというのだ。
「全て無駄にせずな」
「使っていきますか」
「そうしようぞ」
こうしてだった、義重は山の民達に獣達を狩らせてその獣とものを交換させて領内の民達にその獣の肉を食わせ毛皮も使わせた、そうしていくと。
山の獣達は瞬く間に減りその害はなくなった、やがて狼達も山に定着し畑が荒らされることはなくなった。
全て落ち着いてからだ、家臣は義重に話した。
「殿、ようやく畑のことが落ち着きましたが」
「何かとのう」
「はい、やることが多かったですな」
「このことはな」
「ただ畑を荒らす獣を退治するだけでも」
「あれこれ考えて手配をして」
「そうしてだったからのう」
義重も家臣に応えて言った。
「何かとな」
「はい、大変でした」
「そうじゃな、しかし思えば政はな」
「こうしたものですな」
「年貢、兵糧にするそれを多く手に入れる為にじゃ」
言葉では一言のこうしたこともというのだ。
「開墾をしてな」
「川や池から水をひく様にして」
「その川が氾濫せぬ様に堤を築き」
「そうして稲を植えさせて秋まで水や虫を見ておく」
田の水がなくならないが虫がつかないかとだ。
「そうしてようやくですから」
「時も手間もかかる」
「左様ですな」
「だから獣から畑を守ることもじゃ」
それもというのだ。
「やはりな」
「時と手間がかかりますか」
「そうなるのう、それが政じゃな」
「そういうことですか」
「そしてその政をしてこそ国も民も保ててな」
「豊かになってそうして」
「戦も出来る、時と暇もかけて」
そしてというのだ。
「これからもやっていくとしよう」
「その通りですな」
家臣も義重のその言葉に頷いて述べた。
「国と民を豊かにし佐竹の家を栄えさせていく為にも」
「是非な」
こう言ってそしてだった、義重は次の政に移った。畑の獣の害を収めても彼にはまだやるべき政があったので。
悪戦苦闘 完
2017・9・19
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