第二章
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「そうするぞ」
「山といいますと」
「そうじゃ、山におるのは猟師だけか」
家臣に対して問いもした。
「どうじゃ」
「山の民ですか」
家臣は義重の言葉で彼等のことを思い出して話した。
「あの者達を使うのですか」
「そうじゃ、あの者達に狩りをさせる」
「獣達を」
「あの者達のことはわしはよく知らぬが」
義重が治めているのはあくまで常陸の平野や山といっても深くない場所の町や村の民達それに海辺の漁師や国を行き来したりして商いをしている商人だ、山の民は彼だけでなくどの国の大名達も治めてはいない。山はまた別の世界なのだ。だから彼も山の民達は治めていないのだ。だからこう言ったのだ。
「だがな」
「それでもですか」
「この度は使おう」
「ではどう使われますか」
「あの者達も狩りをして暮らしておるな」
「その様ですな」
実は家臣も山の民のことはよく知らない、どうして暮らしているのかを。
「どうやら」
「うむ、ならばな」
「あの者達に狩りをしてもらいますか」
「うむ、狼達を山々に入れて数も増えて定着するまではな」
「そうして獣達の数を減らしますか」
「そうしてはどうか」
「そうですな」
家臣は義重の言葉を受けて考える顔になった、そのうえで義重に話した。
「あの者達は食えるだけは狩るでしょうが」
「それ以上はですか」
「はい、山の民は銭等も使いませぬな」
「そうらしいのう」
「ではです」
「狩ってもか」
「はい、あの者達が食う分だけで」
それでというのだ。
「それ以上は」
「それ以上に増えて困っておるがな」
山々にいる山の民達が食う以上に獣が増えて麓の村々の畑を荒らすから今こうして話をしているのである、義重はこのことを思った。
「こう考えたが」
「そのことが問題かと」
「そうじゃな、どうするかじゃが」
「商いなら別ですが」
家臣はふとこの言葉を漏らした。
「町での」
「それならな」
「はい、狩った獣を買えますが」
「そうじゃ、ならじゃ」
義重は家臣のその言葉でまた閃いた、それでこう言った。
「買おう」
「山の民達が狩った獣をですか」
「そうして獣達をどんどん狩ってもらってな」
「数を減らしてですか」
「獣の害を減らすとしよう」
「そうされますか、しかし」
家臣は己が今言ったことを再び主に話した。
「それは」
「山の民達は銭を使わぬからか」
「あの者達を商いは出来ませぬが」
主に真剣な顔で述べた。
「残念ですが」
「言われてみればそうじゃな」
「ですからそれも」
「銭では買えぬか」
「そちらは」
「ではどうするか」
「銭が使えませぬからな」
家臣は苦い顔で自分よりも苦い顔になっている義重に話した。
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