第一章
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悪戦苦闘
この時常陸の主佐竹義重はその話を聞いて思わず呆れた、そしてその後でその呆れた顔で自分にそのことを話した家臣に聞き返した。
「では民達はか」
「はい、近頃山から出る鹿や狸、狐に猿、穴熊に熊が増えて」
「畑を荒らしてか」
「困っております」
「そんなものは片っ端から殺してじゃ」
そうしてとだ、義重はその彫のある太い眉を持つ男らしい顔で言った。
「食ってしまえばよかろう」
「それがどうも村々では戦で猟師が出ていて」
「ふむ、鉄砲を使うからのう」
自分の話なのでだ、義重もその辺りのことはすぐにわかった。
「わしが戦に引っ張っておるな」
「そのせいで村に猟師がおらず」
そのせいでというのだ。
「そうした獣が増えて」
「それでか」
「はい、近頃村の畑を荒らし民達が困っております」
「事情はわかった、しかしな」
その話を聞いてだ、義重は家臣に苦い顔でこう言った。
「だからといってな」
「鉄砲を使える者をですな」
「戦で必要じゃからな」
鉄砲を多く使う戦になっていた、それは関東も同じで義重が主を務める佐竹家もその辺りの事情は同じなのだ。
だから戦の場に猟師を連れて行く、だがそのせいでなのだ。
「戦に連れて行くが」
「多くの褒美も約束して」
「そのうえでな、あの者達は必要じゃ」
戦の場にというのだ。
「どうしても」
「左様ですな」
「しかし畑が荒らされるのならな」
「放ってはおけませぬな」
「それを放っておいて何が大名じゃ」
義重は家臣に強い声でこう言った。
「何でもないわ、しかしその山には狼がおらんのか」
「狼ですか」
「そうじゃ、鹿だの穴熊だのは狼が食ってしまうであろう」
こう家臣に聞くのだった。
「そうであろう」
「はい、しかしどうやらです」
「そうした村の近くの山々ではか」
「狼がいないとか」
そうした山だというのだ。
「どうにも」
「そうか、ではな」
「それではですか」
「そうした山々に狼達を入れよ」
これが義重の考えだった。
「よいな」
「そうした獣達を食わせる」
「そうせよ、よいな」
こう言うのだった。
「そうすれば獣は減るわ」
「わかりました、ただ」
「何じゃ」
「狼を捕らえそうした山に送るのはいいにしても」
「何かあるか」
「狼を捕らえ山に送りその数が増えるまでは」
「今も獣達は畑を荒らしておるな」
義重はこのことについても考えた。
「そうであるな」
「はい、ですから」
「今どうするかも問題じゃな」
「どうされますか」
「そうじゃな、今は戦はしておらぬが」
それでもとだ、義重は再び考える顔になった。そうして熟考してそのうえで家臣に対してまた述べた。
「鉄砲
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