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ホームランバッター、アベレージヒッター
第四章

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「あの二人はいいんだよ」
「パワーヒッターにアベレージヒッターか」
「そして左右違う」
「そこまで違うからか」
「かえっていいんだな」
「同じタイプばかりじゃ相手も攻略しやすいさ」
 パワーヒッターだけでもアベレージヒッターだけでもというのだ。
「そうしたものさ、けれどあの二人はそれぞれ違ってな」
「それかがかえってよくて」
「強いんだな」
「そういうことか」
「そうさ、これでわかったな」
 笑顔で言うワンだった。
「うちのチームの強みが」
「ああ、本当にな」
「打線の柱が二人いてか」
「その二人がそれぞれ違うタイプ」
「それがいいんだな」
 記者達も納得した、実際にチームはストイコビッチとサンターナの二人の活躍で強い打線を誇っていた、しかし。
 ワンはこっそりとだ、チームの五番バッターでレフトを守っているグレッグ=ジョーンズ、打率は低めだがパワーヒッターで勝負強い彼にこっそりと囁いた。逞しいアフリカ系の青年に。
「あの二人の後はな」
「俺が仕事をする」
「いつも通りな」
「わかってるさ、ボス」
 ジョーンズはワンに笑顔で応えた。
「うちのチームはあの二人だけじゃない」
「御前もいてだよ」
 毎年ホームランを三十本以上普通に打ちチャンスにも打ってくれる彼もだというのだ。
「うちは本当に強いんだ」
「チームは三番四番だけじゃない」
「それだけでも強いけれどな」
「本当に強くなるにはだよな」
「五番もだ」
 クリーンアップでは最後のこの打順の者もというのだ。
「しっかりしてこそな」
「本当に強いな」
「若し四番で終わりならな」
 怖いバッターがだ、相手チームにとって。
「まだ楽だよ」
「そこに五番もいればな」
「違うんだ、御前はあの二人よりはずっと目立たないが」
 チームの看板にもなっているストイコビッチ、サンターナよりもだ。守備も地味で派手な性格でもない。
「これからもな」
「ああ、仕事をするな」
「そうしてくれ、いいな」
「わかってるさ、ボス」
 ジョーンズも笑顔で応える。だが彼もワンも表には出なかった。本当のキーマンはあえて言わないものだからこそ。


ホームランバッター、アベレージヒッター   完


               2017・8・19
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