第二章
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「それでだよ」
「それで、ですか」
「それだけだよ」
「そうなんですね」
「就職活動でな」
浩輔は四回生でそれに入っているのだ。
「こうしていつも帽子を被ってるとな」
「内定を貰いやすい」
「そう言われてな」
それでというのだ。
「被ってたんだよ」
「そうですか」
「それで実際に決まったしな」
「そうでしたね」
「八条カラオケな」
二人が通っている八条大学を経営している八条グループの企業の一つだ。全国でカラオケのチェーン店を経営している。
「それのスタッフになったからな」
「本社のですね」
「ああ、そうなったよ」
「よかったですね」
「あちこち転勤も多そうだけれどな」
全国規模のチェーン店だからである。
「それでも決まったぜ」
「カラオケお好きですしね」
「あそこでバイトしていたしな」
その八条カラオケの三宮店でだ。
「だからな」
「お仕事ご存知ですね」
「そのこともあって採用されたんだよ」
既にカラオケのことを知っているからだ。
「それだったらな」
「八条カラオケで」
「社員としても働いていくな」
「頑張って下さいね」
「ああ、カラオケ店も面白いんだよ」
そのスタッフはというのだ。
「やってると色々見られてな」
「お客さんがですね」
「面白いんだよ、駅前のスタープラチナだってな」
その店もというのだ。
「面白いお店だろ」
「店員さんが横浜ファンの」
「そうだよ、あの店だってな」
「確かに面白いお店ですね」
「だからこれからもな」
「カラオケボックスで」
「働いていくな」
こう沙織に話した。
「楽しく汗水流してな」
「カラオケが本当にお好きなんですね」
「働いてお金稼ぐこと自体好きだしな」
「だからですね」
「大学卒業したらな」
それからはというのだ。
「カラオケボックスの店員さんだよ」
「頑張って下さいね」
「そうしていくな」
二人でこうした話もした、そしてだった。
沙織の誕生日は近付いていた、だが浩輔はそのことについては何も言わなくなった。それは沙織も同じで。
浩輔にも友人達にも家族にも言わなかった、それで友人達は沙織に対して怪訝な顔で尋ねた。
「彼氏の人どうなの?」
「お誕生日何かくれるかわかってるの?」
「何か本人さんから聞いてない?」
「そうした話は」
「はい、何も」
沙織は正直に答えた。
「聞いていません」
「それで聞いてもいないのね」
「そうなのね」
「沙織ちゃん自身は」
「特になの」
「はい」
その通りだというのだ。
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