六 不可視の領域
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そして、最後の鎖の一本が溶けたかと思うと、次の瞬間、釜が弾け飛ぶ。
其処から、のっそり現れたソレは、砂で形成された山の如き巨躯を大きく揺らした。
「ひゃっはあああああ―――!」
高いテンションで、守鶴が雄叫びを上げる。
封じていた茶釜から解放されてしまった一尾を、我愛羅は悄然たる顔で見上げた。
「なにがなんだか知らねえけど、解放してくれたお礼にぶっ殺してやるぜ!!」
隈取りのような文様を纏わせた巨大な体躯を愉快げに震わせる。叫ぶや否や、守鶴は我愛羅と、金色の彼に猛然と襲い掛かった。砂で形成された巨大な腕を振り翳す。
だが腕が振るわれるよりも先に、我愛羅の隣で、金色の彼が涼やかな声で朗々と言い放った。
「俺がお前を解放したのは、会話するならお互いに顔を見て話すべきだと思ったからだ」
守鶴からの攻撃に身構えていた我愛羅は、一向に来ない衝撃に困惑顔で一尾を見る。
己を封じていた鎖も釜も無くなり、自由になったはずなのに、守鶴は動かない。
否、不思議なことに動けないようだ。守鶴自身も己が何故動けないのか、戸惑っている。
その妙な事態に動揺するのは我愛羅と守鶴のみで、金色の彼はやはり変わらず、悠然と構えていた。
「話し合いは共存するに必要な行為だ。いつまでも口を利かないままだと、理解もし合えない」
話し合いの場を設けた彼は涼しげな顔で、しかしながら、有無を言わせぬ強い口調で語る。
難しい議題だが、現時点で少しでも彼らの間柄を良くしなければ、今後が大変だろう。
勝手な言い分だとは百も承知。
事態を把握できずにいる我愛羅の隣で、金色の彼――うずまきナルトは、そこでようやっと、己がこの領域に足を踏み入れた目的を告げた。
「せっかくの機会だ。お互いに歩み寄らないか」
人柱力と尾獣ではなく、仲間として相棒として…――そして友となれるべく。
せめて、それぞれを尊重し合う仲になってほしいが為に。
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