辺境異聞 6
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にその瞳には恐怖の魔力が込められていた。
だがセリカの強い魔力抵抗の前にはなんの効果もない。
「魔術を封じたのがあだになったね。一瞬で滅ぼしてあげたのにさ、こいつで刻まれるのは死に損ない(アンデッド)にはさぞかし痛いだろうに」
「……真銀!」
鉄を上回る驚異的な剛性と靭性を兼ね備えた真銀を魔術的な手段で幾度も折り返し、叩き、鍛え抜くことで鋳造した至高の一振り。
それはセリカ秘蔵の逸品。《剣の姫》エリエーテ=ヘイヴンの形見の剣だ。
セリカは物品に蓄積された思念や記憶情報を読み取り、自身に一時的に憑依させる【ロード・エクスペリエンス】によって剣の姫と謳われた達人の卓越した剣技を操ることが可能なのだ。
魔術戦のみならず、白兵戦にもセリカに隙はない。
「私はおまえらみたいな死にぞこないがきらいなんだ。容赦はしないよ」
「訂正なさい」
「ああ?」
「死にぞこない(アンデッド)ではなく、永遠者だと訂正なさい」
「永遠者だと? おまえら吸血鬼が」
「ええ、そうよ。不死者の頂点、命なき者の王、暗黒の貴族、闇の生をすごし、黄昏に目覚め、夜明けに微睡む、永遠なる者……。それがわたしたち吸血鬼」
「他人の血を吸って生き長らえる偽りの不死者、醜く生き汚い歩く屍、墓場の土の詰まった棺桶をねぐらにしている、出来損ないの死にぞこない。それがおまえらだ。永遠者だって? 不潔な化け物風情が笑わせるなよ」
「……脆弱な定命の者が、よく吠えること」
フーラが腰に差した短杖を抜いてひと振りすると、二メトラ近い長さまで伸びた。太さも増し、ワンドというよりクォータースタッフだ。
「なんだい、棒術使いだったのか」
「ただの棒ではないわ」
フーラの口からコマンドワードが唱えられると、棒の先端部分から直径方向へ三日月型に光が迸った。
光の粒子は力場によって固く凝縮し、腕の長さほどの光の刃となる。
おなじく反対側の先端からも逆方向に三日月型の刃が出現した。
ただしこちらは漆黒の刃だ。
「捕食者と被食者はどちらが強いのか、わからせてあげる」
「狩られる者より狩る者のほうが強いんだよ、化け物。おまえたちを倒すのは、いつだって私ら人間だ」
白銀の刃がひるがえり、光闇の刃が旋回する。
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