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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 6
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。ヨーグには、あいつらは気づいてなかったと言えば――」
「それはルール違反じゃないか、フーラ」

 フーラのいる場所とは反対側。談話室の奥から声がした。
 部屋の隅から霧とも霞とも靄ともつかない煙が生じ、人の形を成す。

「よくぞそこまで気づいたものだ。まさかワインセラーの地下道まで発見するとは恐れ入ったよ。そして、なにより素晴らしいのは、それが私の勝利を表すことだ」

 ヨーグだ。
 漆黒のマントに身をつつみ、夜会服を着たヨーグ・ボルツェル辺境伯がそこにいた。

「ろくに相手もできず失礼した。なにせそういう決まりだったのでね」
 
 青い唇を歪めて酷薄そうな笑みを浮かべると、長すぎる犬歯がちらりとのぞく。
 夕食の時に見せていた、いかにも貴族然とした瀟洒で冷徹な雰囲気は鳴りを潜め、獣じみた風貌があった。

「あらヨーグ、耳ざといこと。盗み聞きしていたのね」
「そろそろ煮詰まる頃合いだと思ったからね。フーラ、今回は私の勝ちだ」

 得意げに宣言すると手にしたタンカードを掲げた。そこには真っ赤な液体が、ただし葡萄酒ではないなにかが満たされている。

「変わった方法で入室するな。今のが吸血鬼の霧化(ミスト・フォーム)というやつか。その状態だと軽く隠形がかかるようだ」
「剣も槍も銃も効かない、優れものだよ」
「そんなことよりあたしたちを動き回らせた理由を訊かせてもらおうか。理由によっちゃあ手間賃がぐんとはね上がるよ」
「強く勇敢で賢しい人たち、わたしたちがなにをしていたのか、特別に教えてあげる」
「我々はここで半世紀近い時を過ごしてきた。ときおり訪れる旅人を糧にしてな」
「たまに毛色のちがう人たちも訪れたわ。わたしたちの噂を聞いて退治しようと思った僧侶や、不死の秘密を知りたがる死霊術師なんかが」
「そんな連中を相手にしているうちにふと思いついたのだよ。ただ食べるだけの食事は味気ないから、ちょっとした賭けを、ゲームをしないかとね」
「わたしが作った筋書きの通りに、あなたたちをだませればわたしの勝ち」
「だまされなかったら私の勝ち。そして今回は私の勝利だ。賭けたのは君たちの血と、そして魂。勝ったほうが先に獲物を選び、美味い血を啜ったあとで自分の僕にできる」



 フーラの筋書きとは――。
 辺境伯ヨーグは兄であるウンキを抹殺し、その地位と婚約者を横取りした。そして領主の地位を利用して死霊魔術の研究をしてソティーとヘルギを生け贄にして吸血鬼となり、この城に君臨している。
 ヨーグが吸血鬼になった頃はフーラはまだ幼く、まったく事情を知らない。
 父の過去を訝しく思ったフーラは訪問者に調査を依頼し、ヨーグが吸血鬼であるという結論にたどり着かせる。
 ところが真相はこうだ。
 この城に住むヨーグもフ
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