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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 6
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ここにあんたの知っている限りの親族の名を書いてくれないか」
「え? なぜです?」
「ブレインストーミングみたいなものさ」
 
 怪訝な顔で聞き返すフーラを諭してセリカがフーラに筆を持たせて、何人かの名を書き綴らせる。
 それを見ていたセリカが確信を込めて断言した。

「この書類、ずばり偽書だね」
「なんですって!?」
「ウンキのものとされるサインの筆跡がフーラ、あんたと一致する」
「そんなこと、なんであなたにわかるんです?」
「言ってなかったかい? 私は第七階梯の魔術師だよ」

 ただ魔力が強ければ、多くの魔術が使えれば、研究実績を積めば高い階梯に至ることができるわけではない。
 考古学、言語学、植物学、心理学、文学、数学、神学、神秘学、生理学、犯罪学、天文学、地質学、科学、化学、紋章学――。
 魔術の才以外にも、この世に存在するありとあらゆる学問に通じた博識の賢者にしか第七階梯は授与されない。
 第七階梯の魔術師ならば、筆者識別くらい簡単にできる。
 セリカはそう言っているのだ。

「偽造されているのは文章だけじゃない、この書類そのものもだ。いかにも古色蒼然とした紙質だが、これは紅茶。特にエイジティーでいちど濡らしてから乾かしたものだ。実際には新しい紙質を年季の入ったものに見せかける、古書の偽造によくある手口さ。本物の記録書はこれ。私たちがワインセラーにある隠し口から降りた地下で見つけたものだ。内容もしっかりと確認済みだよ」
「わたしが、偽物を用意したとでも言うの?」
「ああ、そうさ」
「ほんとうにそんなことを考えているの? わたしが、あなたたちを騙そうとしているだなんて。ひどいわ。そんなことをして、なにになると言うのよ!」
「ついでに言うとフーラ。それにヨーグ。あんたたちの正体は吸血鬼だ。地下の聖堂や温室で無数の犠牲者を発見したよ。首に牙の痕がる、干からびた死体をね」
「……吸血鬼は、吸血鬼かも知れないのは父なのでは?」
「なんならこの場で【ピュアリファイ・ライト】を浴びて無実を証明してみるかい? ボルツェル家の記録にもソティーの日記にも書かれていない『フーラ』さん」
「そう、あなたはどうしてもわたしを悪者にしたいのね。……ねぇ、アキヨシさん。あなたは、信じてくれるわね?」

 フーラがしなを作った表情を浮かべ、哀願する。だが秋芳の心が揺れ動くことはなかった。

「あいにくと魅了の魔術も薬も効いてないんだよ、フーラさん。あのとき俺に一服盛ろうとしなければ、もう少し信用していたかもしれないな」
「……もういいわ、もういい。もう結構っ!」

 談話室から退出しようとしたフーラが足を止め、きびすを返す。
 ひとつしかない出口をふさぐかたちで。

「そうね、ここで殺してしまえばいいんじゃない
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