ep10 西暦2296年 (2)
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カティ・マネキンは切れ長の目を光らせ、俺たちに資料を渡した。
「この紛争で重要なのは、テロ組織『アルストス』の戦力の大半を削ぎ落とし、国に傭兵を撤退させることです」
マネキンは手元の資料を1枚めくってみせる。俺はそれに習って先を進める。
「そこで、我々は第3者を名乗り、アルストスに偽情報を流します。そして、傭兵との戦闘に巻き込み、両者を疲弊させます」
デニス中尉がその説明に眉を動かした。
「つまり、我々はアルストスが疲弊したところで出撃するということですか?」
なかなか悪趣味な作戦だ。成功率は高そうだが、乗り気にならない。
だが、マネキンはデニス中尉の質問に首を振った。
「いえ。軍はその間にテロ組織の中枢を狙います」
「中枢……。スーダンですか?」
「そうです。サウジアラビアから進出した組織の前線基地。傭兵との戦闘で戦力をあぶり出し、空になった基地に接近します。そして、軍が本格的に展開を始めたことを彼らに伝え、撤退します」
「撤退?組織に攻撃はしないのですか?」
マネキンはデニス中尉を見据え、淡々とした調子で話した。
「組織の戦力を傭兵との戦闘に注ぎ込んでいる時点で彼らは詰んでいます。それに、軍が本腰を入れて動いていることを、アルストスを支援する民間軍事会社や武器商社が知れば、彼らから手を引かせることもできるでしょう。彼らはハイリスクを負ってまで仕事をしませんから」
「……あなたはそこまで見据えて」
「AEUに属する国々が足並みを揃えられなかった結果が今回のイザコザを生みました。アルストスの危険性を下げれば、国は傭兵を手放すでしょう。アルストスが他者からのバックアップを受けられなくなればテロは自然と減少し、紛争を大きく停滞させることができます」
やり方が野蛮なのか丁寧なのか、よく分からなかった。ただ言えることがあった。
この女は相当のキレ者で、作戦はきっと成功する。長らく続いているテロ組織と傭兵、AEUの混濁した紛争はかなり抑制され、テロ行為は大幅になくなるだろう。
俺は思わずマネキンに聞いていた。
「なぜ、最後まで叩かないのですか?テロ組織の存在を許せば、さらなる進出組織が出ることも考えられます。彼らと利害が一致する他陣営の協力もありえます」
「確かに、根元を切らなければ払拭は難しいでしょう。しかし、そうまでしなくとも戦争はなくなりません」
「なっ……」
「傭兵はその象徴です。戦争はある種の事業です。儲かる概念なのです。だからこそ、止まらない戦いを緩やかにすることで沈静化を目指すのです。いかに効率的に紛争を抑制するか。私が目指す戦術はそこにあります」
マネキンは終始顔色を変
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