辺境異聞 5
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くる仕掛けがある」
セリカの【トラップ・サーチ】が反応し、罠を感知する。
「すごいな。罠の有無だけじゃなくて、そんな具体的なところまでわかるのか」
「じゃあ【ブレイズ・バースト】で罠も扉をぶっ飛ばすぞ」
「やめろ! そんなことをして中に貴重な書物や薬品、重要な情報になるような物があったらどうするんだ。爆炎でおしゃかにするつもりか」
「じゃあどうするんだ」
「こうするんだ」
ふところから紙を取り出して呪文を唱えると、たちまち等身大の人形となった。紙を触媒にしたパペットゴーレムだ。
【アン・ロック】で解錠した扉をゴーレムに開かせると、その胸に一本の矢が突き刺ささる。
セリカの言ったボウガンの罠が発動したのだ。
力も耐久性も低い紙製のパペットゴーレムは、その一撃で穴の空いた紙へと変わった。
「ふん、おまえの危惧したとおり中は書庫みたいだな」
「そうだ。あやうく灰塵になるところだったわけだ。……この矢。ごていねいに毒まで塗っていやがる。……ベラドンナの毒だな」
台の上に設置されたクロスボウには扉がある程度開くと発射されるようになっていた。さらに一度射っても扉を閉めると再装填される仕掛けまで施されていた。
慎重に罠を解除してから室内を見回すと、きちんと装丁された本から巻物まで、年期のありそうな文献が束になって本棚にならんでいた。
書庫のようだ。
「げー、また書物漁りか」
「本の山を相手していたのは俺だ。今度はあんたも手伝え、手分けして調べるんだ」
「めんどくさいねぇ、しかもこんな埃っぽくてジメジメした場所でさ」
「たしかに、不衛生な部屋だな」
湿気を吸った埃のもつ独特の臭気が室内を満たしていた。呼吸するたびに肺の中に不潔な黴が入ってくるような気がして身体に悪いことおびただしい。
「烏枢沙摩明王の呪が使えれば一発で清潔にできるんだが……」
「私は向こうの部屋を見てくるから、ここはまかせたよ」
「あ、おいっ。……壊したり燃やしたり吹き飛ばしたりするなよ」
セリカは罠のかかっていないほうの部屋の扉を解錠し、中を覗いてみた。
小さな個室で、朽ちた机や寝台しかない。
「ん?」
ふと気になってドアノブを見ると、外側からしか施錠・解錠できない仕組みになっている。
「座敷牢ってやつかねぇ」
だれかが長いあいだ閉じこめられていた形跡があり、机の上には汚れた本が置かれていた。
手にとって読んでみると、どうやらだれかの日記のようだ。だが保存状態は最悪で、ほとんど読めないうえに内容は支離滅裂だった。
暗号のたぐいではない、この日記を書いた人物は精神に異常をきたしており、その症状は日付を追うごとに顕著になっていく。
次のような内容が、かろうじて読み取
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