EX回:第34話(改2)<不憫(ふびん)>
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り押されているようだな」
「はい」
美保の艦娘たちが、どれだけ不利な状況で戦っているのかが伺えた。
「だが彼女たちの活躍で貴重なデータが持ち帰られたら決して無駄ではない」
「……」
相変わらず冷静な計算で動く人だ。
その間にも断片的にインカムに通信が入る。艦娘たちが不憫だ。
機体は同じエリアを大きく旋回している。
敵も美保の艦娘たちとの戦闘に集中し、こちらまで迎撃してこないのは幸いだ。
戦闘に意識を向けながらも参謀は、周りの気候に注意している。
「あの『現象』が起きる気配は無いな」
彼女にも気象条件が分かるらしい。
「あれが発現すれば直ぐに旋回を中止して現象が活発化する方向を探りながら直進する」
参謀は説明する。
「はぁ」
私は生返事をする。正直、私は参謀の意向とは反対に発現して欲しくないと思っていた。
来たときの「あの」現象は、まだ起きてはいない。だがもし発生したらどうする?
この状況で下の艦娘たちを回収することは限りなく不可能……私は苦悶した。
『敵機が多い……何とかならない?』
赤城さんが弱音を吐くほど戦闘は不利な状況になってきた。もとより条件が悪いうえに勢力も違う。
『だめよぉ、あの飛んでくる爆弾とか……』
通信が途切れる。
『こいつら(駆逐艦)もウザい……』
これは比叡。
「そんなの蹴散らすネ!」
金剛が叫ぶ。こいつも自分が行きたいだろうに……もどかしそうだ。
『雑魚は私が相手になるわ』
龍田さんが、そう言いながら肉弾戦を展開中らしい。ときどき何かが激しく衝突し金属が擦れる音が混じる。
『あの空母さえ叩ければ……』
搾り出すような日向の声。
『くっ、遠い……」
敵の迎撃と、この荒天下で赤城さんの航空機部隊も思うように攻撃が出来ないらしい。
「相手の空母まで、なかなか届かないのね」
夕張さんも呟く。
「チッ」
彼女だけでなく技術参謀もイライラしているのが分かる。どっちつかずな状況では待つ方も辛いものだ。
「こうなったら、残りの艦娘も出撃を……」
そう言いかけた私に技術参謀は首を振った。
「ムダだ。消耗戦になる」
「そりゃ……」
一瞬、切れかけた私だったが直ぐに口を閉じた。
青葉さんや夕張さんが、さっきから申し訳なさそうな顔をしていたのだ。
そう、二人は戦闘より情報や技術に長けている。おまけにブルネイで収集した艦娘量産化のデータを持っているのだ。参謀としても二人を戦闘に出したくはないだろう。
だが、このままで何もしないのは結局、見殺しではないか?
事情を悟った金剛が提案する。
「いっそ、このまま機体ごと、もう一度バトルフィールドに降りるネ?」
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