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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 4
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肌、眼球を失った虚ろな眼窩、そして、鼻をつく屍臭。
 その数、一〇体。
 むせ返るような草花の芳香に屍臭が混じり、形容しがたい悪臭が鼻をさいなむ。

「ああ〜、ゾンビなんか出してゴシック・ホラーの雰囲気が台無しだぁ。それにこの臭いときたら……、鼻の下に○ィックス○ェポラップ やメ○ソレー○ムを塗りたいところだな」
「軟弱な男だな、この程度の臭い、まだましなほうだろうに。魔導大戦の時はもっと凄惨で酸鼻を極める行為が繰り広げられていたんだぞ。それよりもよくごらん。こいつら、妙に干からびてないか?」
「……たしかに、ドラウグルみたいにカサカサだな」

 人の身体とは水分が多いものだ。およそ六割が水分――おもに血液でできている。
 だがこの死体からは完全に血が抜かれているとセリカは見た。
 血液は腐敗を促進し、その結果強烈な屍臭を発する。
 この血抜きについて犯人の狙いはなにか?

「腐敗の程度をやわらげたり、遅らせるため。じゃなさそうだ。見てみろ、こいつらの首筋を」

 骨と皮だけになった死体の首筋にふたつ。小さな穴が開いている。

「まるで吸血鬼にでも噛まれたかのような痕だが、まさか……」
「そのまさか、じゃないか? ヨーグの書斎にはたくさんの死霊術関係の本があったが、その中には【ビカム・アンデッド】についてのものもあった」

 【ビカム・アンデッド】。
 高位の魔術師や僧侶など、魔導を極めた者が自らに不死の魔術をかけて不死者と化す、死霊術の奥義。

「【ビカム・アンデッド】でなれる高位の不死者は吸血鬼(ヴァンパイア)とリッチの二種類だ」
「ええ〜と、この世界の吸血鬼ってのはどういう存在なんだ?」
「知らないのなら教えてやろう、セリカ=アルフォネアの講義を心して聴くがいい」

 吸血鬼、それは暗黒の貴公子、アンデッドの頂点、不死者の王。
 かりそめの生を過ごし、黄昏に目覚め、夜明けに恐怖し、憧れる者。
 その起源は聖エリサレス教の神話にまでさかのぼる。
 人類最初の殺人を犯したある人間が神によって不死の呪いを受けた。彼、あるいは彼女はみずからの呪いに苦しみ、生と死について徹底的に調べたが、それを解く方法は見つからなかった。だが他人におなじ呪いをかける方法は見つかった。それが、吸血鬼のはじまりだ。そしてそれには知恵ある者の生き血を求めてしまうという新たな呪いまでくわわってしまった。
 吸血鬼の能力はひとりひとりがまったく異なっている。
 太陽の光に極端に弱く、陽の光に焼かれる者もいれば、そうでない者もいる。
 流れ水を渡ることができない、足を踏み入れれば麻痺する者もいれば、そうでない者もいる。
 聖エリサレス教の聖印に弱い者もいれば、そうでない者もいる。
 昼間は眠っていなければならない者もいれ
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