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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 10
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の応酬。

「ええい、呪術者なら呪術を使わんか呪術を。この脳筋術師!」
「先に素手で挑んできたおまえがそれを言うか、バラガキが!」

 打撃は相手と接触するためのきっかけにすぎない。格闘戦はどうしても密着するものである。こちらから相手との接触点を作り、そこから手首をつかんだり、側面や背後にまわったり投げたりと、バーリトゥード(なんでもあり)だ。
 地州につかまれ、あやうく投げ飛ばされそうになるところを、相手の身体にしがみついてやりすごす。柔道式の受け身なぞとらない。下が畳などではないのが実戦だ。音の出るような柔道式の受け身をアスファルトや砂利の上でしたらけがをするだけで受け身をとる意味がない。
 そのまま羽交い締めにしようとするが、うしろにまわした手に顔面を掻き回されそうになったので上体を反らした瞬間、背中から地面にダイブされる。息がつまり手がゆるんだ隙を見逃さす身を起こした地州はそのまま起き上がりざまに秋芳の顔にむかって膝蹴り。
 両手でガードしつつ打撃の勢いを殺すために後ろに跳びすさる。
 素手の間合いから離れ、あらためて対峙するふたり。

(こいつ、ケンカ慣れしてるな)

 おたがいに相手の武は道場拳法などではなく実戦で練られたものだと痛感した。

「……武術はもっとも実践的な呪術のひとつと言うが、なかなかどうして。先ほどうちの連中を退けた腕といい今の技量といい、闇鴉には鬼喰らう鬼∴「刀冬児をはじめ、武辺者がよくいるらしい」
「鬼を喰う鬼とはまたおそろしい。アベル・ナイトロードみたいだな、この世界の冬児は」
「アベルとかいうやつは知らん」

 無駄口を叩いている間にも結界内の空気が変質しつつある。鼻をつく臭気は強まり、目に染みるような痛みを感じはじめた。

「おまえのツレは空気を酸性の毒気にする呪を唱えたようだな。まったくえげつない」
「うん、でもまぁ恋人の悋気で一〇〇tハンマーや電撃を喰らうのって、男の夢でもあるしね」
「きさまの趣味嗜好など知るか! ――オロロ・シンバラ・アラハバキ・カムイ・ニギヤ・ハヤニ・ナガスネ!」

 アラハバキの神呪を唱え終えたとたん、地州の身体が秋芳の視界から消えた。
 否。
 消えたのではない、高速で移動したのだ。またたく間に地州の身体は数メートルを移動したのだ。
 アラハバキ。
 荒覇吐、荒吐、荒脛巾などと表記される、おもに関東や東北で信仰されている神。
 その起源には諸説あり、道祖神や塞ノ神、製鉄神や蛇神としての神格を持つ、謎多き異貌の存在。
 そのアラハバキ神には健脚の神としての側面も持っている、地州は自身の素早さを劇的に上昇させる術をもちいたのだ。
 地州の世界から音が消えた。
 結界の外では神龍武士団たちが逃げる人々を追いかけたり、京子に立ち向
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