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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 10
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上がばたばたと倒れだす。
 京子の放った眠りの呪によるものだ。
 さらに八陣結界を構成する武士団員たちも昏倒し、結界が解除されかけたそのとき八枚の呪符が放たれた。
 呪符は空中にとどまり、武士団たちが直前まで結んでいた結界の呪力をそのまま掠め取るかたちで八陣結界を再構成。八枚の呪符から伸びた青白い霊光は秋芳のみならず地州までその内部に封じ込んだ。

「……京子?」

 呪符を放ち結界を展開したのは京子だ。
 本来は八人のそろわなければ完成しない封印結界を呪符で代用しているので結界の結びは弱くなるものだが、その術の完成度の高さは先ほどの比ではない。
 
「おのれ、仲間がいたのか!」

 呪力(ちから)まかせだった神龍武士団たちのそれとは異なり、京子の結界は精緻かつ剛健、巧妙にして堅固。高い技術と呪力によって構成されていた。
 あわてた地州がいそいで結界を解除しようとするも、間に合わない。

「俺ごと封印するだなんて、いったいなんのつもりだ」
「さっきの質問、はぐらかしたままでしょ、答えて」
「しつもん〜?」
「そう。いったいだれとラブホなんかに行ったのよ、恋人? それともそういう人?」
「いや、まぁ、それはその……」
「秋芳くん、前に女の子とつき合ったのはあたしがはじめてって言ってたわよね」
「そうだぞ」
「じゃあやっぱりそういう系の仕事の人だったの?」
「ちょ、なぜにこのタイミングでそんなことを……」
「はやく答えて」
「いや、それはなんと言うか、まぁ……あれだ。俺も男だからな、キャバクラはもちろん遊郭のような場所に行ったりして、湯女や飯盛女の類と遊んだことも多少はある」

 湯女に飯盛女。いずれも江戸時代の娼婦で、前者は銭湯で垢すりや髪すきのサービスを、後者は旅籠で客に食事の給仕をするほか春も売っていた人のことで、こんにちでいうソープ嬢やピンクコンパニオンのようなものだと思っていい。

「だがそれは君に合う前のことだからな! 君とつき合うようになってからはそういう店にも嬢とも無縁だ。信じてくれ」
「ええ、信じるわ。いままで服にちがう香りがついていたこととかなかったし、変な会員証や名刺がお財布の中に入ってたこともなかったし」
「お、おう……」

 世の中には浮気などしていないか、おたがいのケイタイをチェックするという恋人たちがいるが、秋芳と京子の間にそのような習慣はない。
 一般の女性でも恋人から二種類以上の香水や消臭剤の香りが漂っていればピンとくる。さらに男の胸にやましいところがあるときの目の動きや、口調。かもし出す空気のちがいに気づく勘の良さを持っている。
 ましてや京子は星詠み。それも森羅万象を見通す仏眼仏母の相、如来眼の持ち主である。そんな彼女に隠し事をするのは不可能だ。


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