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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 3
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でそんなものが台所に?」
「まぁあわてるな。幸いここにユニコーンの角を砕いて作った万能の解毒薬があるから、飲め。フーラ、あんたもお飲み」
「……いえ、わたしも錬金術をたしなむ身です。薬の用意くらいはあります」

 フーラはそう言うとそそくさとその場を立ち去った。はたから見たら良い雰囲気のところを邪魔されて気分を害したように見えるだろう。

「……礼は言わないぞ。それと、薬も不要だ。フーラの薬は効いてない」
「ん? 一服盛られたことに気づいていたのか」
「俺は陰陽師でもあり呪禁師でもあるからな、多少は鼻が利く」

 呪禁師、あるいは呪禁道士。呪術によって病気の原因となる疫神や瘴気を祓う治療などを務めた典薬寮の役人。

「こっちに来てから色々と薬を試したよ。あれは浮気草、ラブ・ポーションの類だな」

 さらにだめ押しの【チャーム・マインド】。両手で口を押さえた時にこっそりと魅了の呪文を唱えていた。
 薬と魔術。両方をもちいて秋芳を篭絡しようとしたのだ。
 コンカラーの苦みとシロッテの甘味で浮気草の香味をごまかそうとしたが、錬金術に通じたセリカはそれを目ざとく察知し、解毒する流れに持ち込んだ。

「どうやって抵抗した? 飲んだふりをしてこっそり吐き出したのか?」
「これから吐き出すところだ。……失礼」

 窓を開けると外にむかって胃の中のものを吐き出した。
 意守丹田。内力を廻らし薬が五臓六腑に染み込むのを防ぐと同時に薬の無効化に努め、薬効を弱めていたのだ。
 もっとも神仙ならざる人の身だ、さすがに完全に無効化することはできなかったので、フーラを魅力的に思えてしまったのは否めない。

「また器用な真似をするねぇ……。だけどいきなりラブ・ポーションぶちかますとは、ずいぶんと惚れられたじゃないか、この色男」
「初対面の男に惚れ薬を盛るような女に好かれても嬉しくないな。とっとと依頼を片づけてフェジテに帰りたい。さっきの話の続きをしよう、まずボルツェル家の記録におかしなかところが――」

 秋芳はフーラの母が死んだ時期の空白と、聞き覚えの無い魔術書のことを説明した。

「で、そっちは倉庫でウンキ伯父さんの肖像画を見たんだっけ。百聞は一見に如かずだ、案内してくれ。あと他に見聞きしたこと情報を交換したいから色々と聞かせて――」
「口で説明するのはめんどうだから移すよ」
「移す?」
「抵抗するなよ〜。《千の言の葉・一指に宿りて・疾く移れ》」
「……ッ!?」

 セリカの手が秋芳のひたいに触れた瞬間、脳に衝撃が走る。一瞬【メンタル・アタック】を受けたのかと錯覚したが、ちがった。
 セリカの見聞きした記憶が、流れ込んでくる。
 白魔改【メモリー・マイグレイト】。
 術者の伝えたい記憶を対象に移す補助呪文(
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