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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 3
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。すみません、わたしの記憶にはありません」
「それとボルツェル家の記録書も調べたのですが、あなたの母が亡くなった時期の記録だけがやはり抜き取られている」
「まぁ! では、やはり……」
「なにかあるのはたしかでしょうね。ところであの温室ではなにを栽培しているんです?」
「おもに錬金術用の薬草をいくつか」
「後で見せてもらってもいいですか、最近この世界の――。ああ、いやこの国の錬金術の勉強をしていましてね」
「ええ、もちろん。わたしも錬金術は好きで、趣味で色々と調合しています。……どうですか、息抜きにハーブティーでも。摘み立ての薬草で淹れたものを用意できますよ」
「よろしいので?」
「はい。昨夜のようにいろいろなお話も聞きたいですし」

 食堂に移りハーブティーを飲むことにした。

「これは……、シロッテで苦味をおさえてありますが、コンカラーの根っこですか?」
「まぁ、よくわかりましね。どちらもお城の温室で採れたものです。スコーンも焼きましたので、どうぞ」
「ひょっとして、これもご自身でお作りに?」
「はい。父はわたしが外出することをゆるしてくれないので、手慰みに……、味はどうでしたか?」
「美味しい」
「よかった! ……変ですよね、貴族の娘がこんなふうにお菓子を作ったりするのって」
「いやいや、調理スキルというのは錬金術に通じるから料理を嗜むのは決しておかしくはないですよ」
「そんなふうに言ってくれて嬉しいです。この前は蜂蜜とティーツリーを使ってアロマキャンドルを――」

 フーラは秋芳が茶を飲み、菓子を食べているあいだ、ずっとしゃべり続けた。

「あ、やだっ、ごめんなさい。こんなの、はしたないですよね、ゴニョゴニョごにょごにょ……」
「…………」
 
 両手で口を押さえて赤面するフーラ。
 その伏し目がちな姿はなんとも可憐で愛らしい。細く可憐な手を取っておのれの手を重ねたくなる。
 シルクのような長い髪からただよう芳しい香りが、麻薬のように感じる。
 形の綺麗なその唇が潤いを忘れないように自分の唇で湿らせて――。

「人が足を棒にして調べまわっているあいだに優雅にお茶なんかして、いい身分だね」
「きゃっ」
「この香りはコンカラーの根っこと……、ん?」

 いつの間に食堂に入ってきたのか、セリカはカップに注がれた琥珀色の液体の匂いを嗅ぐと軽く眉をひそめた。

「……コンカラーの根は苦味を味わうのが通なんだ。シロッテで甘味を足すのは私の好みじゃないな」
 
 口元まで持っていったカップをテーブルへ戻す。

「足を棒にしてと言ったが、どこをほっつき歩いてたんだ。俺は一日中本の山と格闘してたんだぞ」
「上から下までさ。まず最初に――」





 秋芳が本の山とにらめっ
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