勝者の輝き
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試合は9回の裏。希のホームランで点差を広げた音ノ木坂は最終回の守備についていた。
「ストライク!!」
疲労しているのは明らかなのにまだ全力での投球を続けているマウンド上の少女をA-RISEはただ静かに見つめている。
「驚いたわね、まさか最後まで持っちゃうなんて」
「そうかしら?あの子には投げ抜きたいって気持ちが見えてたからこれくらい当然だと思うけど?」
(珍しいな、ツバサが好評価するとは)
いつもはあまりいい評価を口にすることはないツバサのコメントに驚いている英玲奈。彼女と同様に西村も驚きを隠せずにいた。
(エースの小泉を投げさせずに最後まで来た。これは決勝戦に万全な状態で臨まれるな)
楽に勝てるならそれに越したことはなかったが、相手もここまで勝ち抜いてきたチーム。そうは問屋が下ろさない。
(まぁ、あのレベルの奴等なら十分勝てるだろう)
戦力的に考えても、経験的に考えてもこちらが有利なのは変わらない。かつて苦汁を舐めさせられた相手が監督を務めるチームを、最高の舞台で叩き潰すことができることに喜びを感じ、笑みを浮かべる。
カンッ
打ち上げられた最後の打球。それはこの試合を必死になって作ってきた少女の前に降ってくる。
パシッ
両手でガッチリとそれを受け止めると、少女はそれを大事そうに抱えながらその場に膝を付いた。
「凛ちゃん!!」
それを見て慌てて駆け寄る穂乃果たち。集まってきた少女たちが見たのは、嬉しさで涙を溢す凛の姿だった。
「よかった・・・勝ててよかったよ・・・」
いつ打たれるかずっと心配だった彼女は、投げ抜けたことに感極まっていた。穂乃果たちはそれに笑顔を見せつつ抱き締めた後、肩を貸して整列へと向かった。
「輝いてるわね、あの子たち」
「あんじゅ?」
支え合っているその姿はまさしくここまで来たチームの姿と言える。勝利を納めた少女たちの輝きは、全てを引き付けるほどだった。
「関係ないわ。私はあいつには絶対負けない」
見惚れているあんじゅの隣で立ち上がったツバサはそう言うと整列のためベンチ前にいる青年を見据える。
(私はあなたには負けられない。絶対に)
異常なほどの闘志を燃やすエース。その理由がいまだわからない仲間たちはあまりの気迫に背筋を凍らせていた。
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