辺境異聞 2
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まだ宵の口の時間に消灯となった。
薄暗い城内を照らすのは時おり走る稲光のみのなかで、談話室だけに明かりが灯る。
「この国の魔術は軍事用に特化していて総じて剣呑だ。遊び心にとぼしい」
「その紙のおもちゃがおまえの言う遊び心というやつか」
テーブルの上で小さな紙人形が踊りを踊っている。
パペット・ゴーレム。人とおなじか、それよりも小型のゴーレムをそう呼ぶが、これもその一種だ。
「ま、子どもは喜びそうだな」
「こういうのを俺のいた国では式神といってな、感覚共有や発声機能をつければ汎用性のある便利な代物になる。外装を変化させて花や蝶の姿に変えることもできれば室内の装飾にもなる」
「こんなにちんまりしたのを動かせて、実際器用だよなぁ、おまえ。……そういえば学院の魔術適性はなんだったんだ? この調子だと召喚系か?」
「ああ、それは――」
その時、談話室の扉がノックされ、遠慮がちに開かれた。
そこにはランプを手にしたフーラの姿があった。
妙に思いつめた表情をしている。
「こんな遅くにごめんなさい、実は悩みを聞いて欲しくて――。何の関係もないあなたたちに、こんなことをお話するのは本当に申し訳ないのですが……」
彼女は自分の出生になにか秘密があり、父のヨーグは城内にそれを隠し、その秘密に近づき、触れることのないよう、監視の目を光らせていると言うのだ。
それだけではなく近頃妙な夢をなんども観るという。
母が何者かに殺され、それを見たいた自分を冷たい手が抱き上げる――。
これはなにかの兆しや託宣ではないか?
亡霊となった母がなにかを訴えてきているのではないか?
実はその夢のせいで出生に疑問を持つように鳴ったという。
「まさか父も行きずりのあなたたちが調査をするとは思わないでしょう。お願いです、どうか私の過去を調べてくれませんか? お金はあまり用意できませんが、もしよろしければ報酬としてこの城にある物をいくつか差し上げます」
「ああ、いいよ」
即答するセリカ。
「おい、いいのかそんな簡単に引き受けて」
「外をごらんよ、雷雨はまだ止みそうにないよ。今夜中に嵐が去っても道はぐちゃぐちゃで、城から出るのは当分先になりそうだろう。暇つぶしにはもってこいさ。それにあんな美少女の頼みを断るだなんて、物語の主人公のすることじゃないよ」
「主人公て……」
こうして、秋芳とセリカはフーラ・ボルツェルの依頼を受けることにした。
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