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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 9
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で脾臓をえぐり、フォークで足を刺す、突いてきたナイフをトレイで防いでそのままぶっ叩く、パンを揚げるために熱していた油をぶっかける――。
なにもないのは道場だけ、まこと厨房や食卓は武器庫のようである。割り箸で眼球を突き刺すなどの致命傷をあたえたり障害が残るような真似は慎みつつ、手近にあるものを武器に狼藉者たちを鎮圧していく。
この連中は無抵抗な者に一方的に暴力を振るうことには慣れていても、その逆の経験は乏しいようで、炊き出しを荒らしていた男たちは次々と土の褥に横にされる。
午後のロードショーのセガールよろしく男たちを片づけていると、ひとりが大声で怒鳴った。
「な、なんでそんな恰好をしているんだっ!」
「……この服がそんなにおかしいか?」
先ほどから制服に向けられる複雑な感情の込められた視線。そのことに疑問を抱いていたので問い質す。
「陰陽塾の制服を着たうえにこんな真似をして、ただですむと思うなよ! ……それともおまえまさか、
闇鴉
(
レイヴンズ
)
の仲間か!」
「…………」
いまいち要領を得ない。闇鴉とはなにか、この世界の陰陽塾はどのような存在なのかを聞き出そうとした。
「おい、陰陽塾ってのは――」
「オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ」
見えざる呪縛の腕、不動金縛りの術が背後から迫る。
秋芳は振り向きざまに刀印を切って、絡みつこうとする呪縛を断ち切った。
「ほう、頭のおかしな騙りの類かと思ったが呪術の心得があるとは、本物か」
呪を放ったのはもちろん京子ではない。まだ若い、見知らぬ男だった。長身でぜい肉のいっさいない、がっしりとした体躯。頭髪を短く角刈りにし、鋭い双眸はいかにも堅気ではない。タトゥーだろうか、額に梵字のような印が描かれている。だがそれよりも気になったのは彼のいでたちだ。
黒い防瘴戎衣。祓魔官が着用するユニフォーム、それとおなじものを身につけていた。
「神龍呪印を持たないにもかかわらず呪をたしなむ。闇鴉の一派に相違ないな」
(相違ないな、ときたもんだ。またずいぶんと時代がかったやつが現れたぞ)
「地州さん!」
あわてふためいて男が駆け寄る。
「この野郎、穀潰しどもの味方をしてオレたちの邪魔を……」
「見ればわかる」
狼藉者たちは地面にころがり、つっぷし、苦痛の声をあげている。
「闇鴉の中には肉弾戦に長けた阿刀冬児という者がいると聞いたが、おまえがそうか?」
意外なところで意外な名が出てきた。いろいろと事情を知りたいところだが、目の前の相手とはとてもじゃないが友好的な関係を築けそうにない。
それでも一応訊いてみる。
「いいや、俺は阿刀冬児てやつじゃない。悪いが田舎から出てきたばかりでね、都会の事情にう
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