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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 9
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にある回教寺院で、オスマン様式が特徴のモスクだ。
 そこの敷地内でボランティアと思われる人たちが炊き出しをおこなっていた。
 炊き出しというと豚汁がつきものだが、イスラム教では豚食は禁じられている。禁忌を避けて鶏肉と野菜たっぷりのスープ。それにパンを用意しているようだ。
 イスラム教には持てる者が持たざる者に食べ物や財産を分け与えよという、ザカートやサダカと呼ばれる喜捨の教えがある。モスクのムスリムたちが貧しい人々に施しを与えるのは当然の行為だ。
 現代の地球では『イスラムなんちゃら』と称する愚劣で野蛮な兇族集団が貴重な遺跡を破壊してまわり、世界中から非難されている。兇族たちは破壊の理由を「イスラム教では偶像崇拝を禁じているからだ」などと言って自分たちの蛮行を正当化しようとしているが、この理屈は一方的な極論だ。
 中東の古代遺跡がなぜこんにちまで残っていたのか、ウマイヤ、アッバース、セルジューク、オスマン――。
 歴代のイスラム王朝は異教の遺跡をいたずらに破壊するようなことはしなかったからだ。他の宗教を信仰する者にまで偶像崇拝の禁止を押しつけたりはしない。イスラムは言われているよりも他宗教に対して寛容で融通の利く宗教である。
 かつてイスラム教国ではシズヤと呼ばれる人頭税を異教徒に課していたこともあったが、一六世紀の後半、アクバル帝の時代に廃止された。異端審問や魔女裁判の嵐が吹き荒れた同時代のヨーロッパにくらべればはるかに平和的だ。
 
 場所が場所だけに列に並ぶ人々の中にはひと目で外国人とわかる人たちも大勢いて、みなおとなしく自分の番を待っていた。
 そこへ招かれざる連中が乱入してきた。

「乞食に餌をやるとはなにごとだ! 癖になってますます怠惰になるだけだぞ」
「乞食と外人には施しを受ける資格などない。お国のためにならんやつらにはなにもあたえるな」

 そのようなことを怒鳴りちらしながら参列者たちに殴る蹴るの暴行をくわえ、止めに入ったボランティアを突き飛ばしている。
 それだけでは飽き足らず、スープの入った大鍋やパンが乗せられたトレイをひっくり返そうとするではないか。

「食べ物を粗末にするやつは万死に値する」

 割って入ろうとする京子を制して様子を見ていた秋芳だったが、さすがに惨状を見かねて飛び出す。
 暴れる者たちを呪術で眠らせることも考えたが、ここは一応現代日本(と思われる)。衆目の場で呪術を行使するのも憚られるので身体を張って暴徒を鎮圧することにした。

「なんだおまえは!?」

 非礼に対する礼なし。初対面の相手を呼び捨てにしたり『おまえ』呼ばわりする無礼な輩は狗や猿の仲間だから返事をする必要はない。
 狼藉を働く男の腕をひねって地面に叩きつけてやると白目を剥いて気絶した。
 スプーンの先
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