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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 9
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「――というような夢を観たの」
「宇宙人かぁ、いったいどんな意味があるんだろうな」
「グレイタイプの宇宙人やエイリアンなんて『神霊感応夢判断秘蔵書』にも載っていないし」

 『神霊感応夢判断秘蔵書』とは安倍晴明が書いた夢占いの本だ。
 雷に打たれる夢は出世や収入を得る吉夢、梨は夫婦不和の兆し。などなどと吉凶を判じているが、さすがに宇宙人は出てこない。
 なお悪い夢を観たさいは「夢はみづ難波の事もいはでよし、ちがひやり戸のうちに寝たれば」と唱えると凶夢を吉夢に変ずるという夢違えの法がある。
 悪夢にうなされるかたは試してみてはどうか。

「まぁ宇宙人といっても外見だけで、結局はただの動的霊災だったわけだし、星や山を登ったという内容のほうが重要だろう。山の夢……。山は困難や努力の象徴。山の頂上へ到達する夢は大きな目標を達成し成功を収めることを、夜空に輝く美しい星を見る夢は願望成就を暗示する。吉夢といえば吉夢だが、同時に空高く輝く星は、手の届きそうにない目標や到達点や高嶺の花の象徴でもあるから……」
「もうっ、そんなことよりもあなたがいないってことの方が重要でしょ」
「死別の暗示かな」
「ちょっと、サラっとこわいこと言わないでよ」
「だが実際に存在の忘却や消失は死を暗示するとみていいだろう。なぁ京子、もし俺が死んだらよみがえらせてくれよ。無に帰すのはいやだからな」
「反魂法? あたしに泰山府君祭でも執り行わせるつもり?」
「泰山府君祭でも六道冥官祭でも金剛寿命陀羅尼でも北斗七星延命経でもなんでもいいけどな。五体満足、意識鮮明で復活できるなら」
「わかったわ、あなたが死んだら絶対に生き返らしてあげる。そのかわりあたしが死んだ時はあなたが生き返らしてちょうだい」
「もちろんだ」
「約束よ」
「約束だ」

 池をへだてた竹藪から涼風が渡って来た。風にかすかに良い匂いが混ざっている。
 すると足音がして稚児髷を編んだ童女が絵皿を掲げて四阿(あずまや)に入ってきた。秋芳と京子のもとに寄ると美しい二重の目を輝かせて捧げるように絵皿をさし出す。
 絵皿には寿包。桃の形をした饅頭がいくつも乗せられ、湯気を上げていた。
 しばし飲茶を楽しむ。

「……ああ、でも自分の命を代償にするようなバカな真似はしないこと」
「当然よね、せっかく息を吹き返してもあなたがいないんじゃ意味がないわ」
「そうだ。愛しい人がいるからこそ生きる意味がある。そうでない世界なんてなんの価値もない。……だから、京子、こいつはあくまでも仮定の話だが。自分以外のすべての人間を犠牲にしてよみがえらせたとしても、怒ってくれるなよ」
「あたしはまず死なないし、あなたも死なせないから安心なさい」

 残るステージもあとわずか、ふたりは次なる世界へと旅立った。

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