*一人の世界
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
プの人間(ひと)でもないから。
言葉のキャッチボール? なんですそれ、美味しいんですか? ってな感じです。
でも何事もアタックあるのみです。移動教室の時、グループ分けの時、休み時間の時、隙さえあればとにかくアタックあるのみなのです。
最初はこんな会話なにが楽しいの……と逆に聞きたくなるようなつまらないものでした。
でしたが、今では三言も続くようになりました。すごくないですか。
やっと。やっと――蒔いた種から芽が出ようとしようとしてたんです。
芋虫がさなぎになろうとしていたんです。
なのにどうしていつもタイミングよく邪魔してくるの? ねぇ――じゅっちゃん。
ある日の授業。
今日の授業は四人一組のグループを作らないといけませんでした。
わたしは当然白うさぎを誘いに行きました。あと二人いる事とか考えず、とにかく彼女を他の人に取られてしまう前に確保しなければっ、という気持ちだけで。
こんなわたしにも優しくしてくれる白うさぎは当然、他のみんなからも少しだけ人気が高いです。
人当たりが良くていい人だから。
だからと言われても白うさぎがいなければもうわたしには手札、コンクリートジャングルの獣(モンスター)達と戦うカードは残さていません。
もうみんなどこかしらのグループに所属してしまっているから。
だから白うさぎだけは――
「白うさぎちゃん。こっちおいでよ」
じゅっちゃんは白うさぎに話かけました。
「え……でも」
すぐ傍にまでやって来ていたわたしを困った表情で見る白うさぎ。
「いいからねっ」
そんな彼女をことなんてお構いなしとじゅっちゃんは白うさぎを連れ去って行きました。
わたしの目の前で白うさぎを連れ去って行きました。
すごく申し訳なさそうな顔をして軽く頭を下げる白うさぎにわたしはまた、ぎこちのない作り笑顔で手を振ります。
いいよ気にしないで、と口パクで伝えて。
じゅっちゃんがリーダーのグループは、彼女を入れて三人。三人じゃだめ、一人足りない。
なにかいい子は……ああ、いるじゃないか、捨てた駒の近くにもっといい駒が。
悪魔のような猟人は小さな白いうさぎを見つけ生きたまま捕まえ食べてしまいました。
可哀想な白うさぎ。この日以来彼女とは話していません。話せていません。
猟人がそれを許さないから。人の獲物は奪う癖に自分の獲物が奪われるのは絶対に許せないの。
僅かに見えたような希望の光はまやかしでした。それは闇の中に蠢く悪魔の笑みでした。
さようなら白うさぎ。短い期間だったけど楽しかったです――ありがとう。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ