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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 1
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言できなかったのかい、占い師」
「……日輪の動き、星の動き、大地の揺れ、天地(あめつち)のことは何人であれどうにもならぬと安倍晴明だって言っている」
「安倍の声明? 北のミサイルが飛んできたのかい」
「メタな発言はよさんか! ……言っておくがきちんと調べれば天候くらい予測できるからな。方位や星の在り方を見て吉凶を占うのが陰陽師の仕事で、その一環として天気を当てるくらい――」
「はいはい、わかったわかった」
「わかればいい、わかれば」

 突如として閃光が瞬く。
 轟音とともに近くの木が炎上した。落雷だ。

「こりゃあいかん、どこかで雨宿りを――」

 ふたたび稲光が走る。
 陽光をさえぎる黒雲と風雨で視界が悪いなか、数瞬だけ光に照らされ、小高い丘の上に城のような建物が見えた。
 
「あそこだ、行こう」

 城の前に来るとセリカがくるりと振り向き、両手を高々と上げ、 音吐朗々と声を響かせた。

「ふっふっふ、いいぞいいぞ。雨よ降れ、風よ吹け、雷よ吠えよ。生意気な人類に天界の鉄槌をくらわせてやるのだ……!」
「……なんの真似だ、それは」
「いや、なに。こういう場所でこういう状況だから、つい」

 城の古い大扉が強風にあおられ、きしみながら開いた。中は真っ暗で廃城のようだと思ったが、奥からランプを掲げた人影が近づいてくる。
 光に照らされ、この時になってはじめて玄関の両脇に立っている門番たちに気がついた。

(隠形しているわけじゃない。こいつら、妙に気が薄い)

 門番たちからは瀕死の病人のように微弱な、弱々しい生気しか感じられない。
 
(まるで、死人だ)

 秋芳は闖入者に視線もむけず、微動だにしない門番たちの姿に、生きる屍のような印象を受けた。

「ひどいお天気ですわね……」

 ランプを掲げた人物。白いドレスを着た金髪の少女が秋芳たちに微笑みかける。

「父はいま執務中で手が離せないため、代わってご挨拶いたします。辺境伯ヨーグの城へようこそ。わたしは娘のフーラともうします」

 光の加減であろうか、稲光に照らされたフーラの瞳は一瞬だけ真紅に染まって見えた。
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