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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 1
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「私ってばほら、淑女だろ。ガードが固いんだよ」
「関係ない森の動物や通りかかった人が巻き込まれたらどうする! 人払いの結界を張るとか、【セルフ・イリュージョン】で身を隠すとか、そういうのにしとけ!」
「おお、なるほどなるほど。そんな使いかたもあるとはね、おまえってほんとうに機転が利くな」
「あんたが雑なだけだ」
「じゃあ水浴びしてくるから覗くなよ。絶対に覗くなよ。いいか、ぜっ、たい、に、の、ぞ、く、な、よ〜」
「わかったから行ってこい!」

 セリカの言葉を反芻する。あれは芸人の前ふり的な、覗けという意思表示ではないだろうか。
 
(ふん、そんな深夜三流俗悪萌えアニメの主人公じみた真似、頼まれてもするものか!)

 へそ曲がりの秋芳は黙々と作業を続けた。
 魚を仕留めたら枯れ枝を断ち割りへし折って、焚き木を作り、河原を掘って焚き火を起こし、大きな葉を折って簡易な鍋を作って湯を沸かし、枝で作った即席の串に刺して川魚を焼く。

「おー、いい感じに焼けてるじゃないか」
 
 測ったかのように絶妙のタイミングでもどってきたセリカは焼き魚を見て相好を崩す。
 水気を帯びた彼女は全身からしっとりとした雰囲気をただよわせ、妙な色気を醸し出している。
 燦然と輝く太陽から、闇夜に浮かぶ月へと変幻したかのようだ。
 セリカが嬉しそうな顔でかぶりつく。赤く柔らかそうな唇に秋芳もつい気を取られる。
立ち居振る舞いは子どものそれに近いのたが、不思議と優美さを感じさせるのだ。

「たまにはこういう素朴な味もいいな。ああ、食後のお茶が飲みたい」
「さすがに茶は用意できないな」
「ならフェジテにもどるとすか」
「タクシーがありゃ楽なんだが……」
「タクシー?」
「遠耳水晶ひとつでどこにでも駆けつけてくれる馬車みたいなもので――」

 山を下りて田園地帯に近づくにつれ空模様があやしくなってきた。
 そう遠くない空から雷鳴が轟き、風が強くなる。
 やがて鉛色をした雲から大粒の雨が滴り落ちた。
 雨は瞬く間に勢いと量を増し、南国のスコールさながらの暴雨と化した。

「ああ、うっとうしい! 【コントロール・ウェザー】でも使って止ましてやろうか」
「局地的な環境情報の改竄は生態系に後遺症を発生させる可能性があるから、行使するのなら念入りに準備をして――」
「また屁理屈を!」
「《大気の壁よ》。ほら、濡れるのが嫌なら【エア・スクリーン】でも使って傘代わりにしろ」
「なるほど、おまえ機転がーー」
「だからあんたが雑すぎるんだっての」

 雨はやむ気配を見せない。
 【エア・スクリーン】によって風雨はまぬがれているが、舗装されていない野路はぬかるみ、歩行が困難になってきた。

「まったく……、こんな大雨が降るって予
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