第一章
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淡水人魚
最近原果補は何かと調子が悪い、部活のテニスも学業もだ。それで同じ高校で同じクラスの篠田裕介にもこう言った。
「本調子出ないのよ、最近」
「テニスも勉強も?」
「どっちも頑張ってるつもりなのに」
こう言うのだった、見れば背は一六五程で細面にやや吊り目の大きな瞳が印象的で眉は細い。長い茶色の髪を左右でツインテールにしている。スタイルは全体的によく胸も結構ある。そのうえで黒髪を丁寧にセットしている自分より七センチ位背の高い裕介の穏やかで和風の顔立ちを見つつ言うのだった。
「それがなのよ」
「今一つっていうんだ」
「あんたは成績クラスでもトップクラスだけれど」
この前のテストでは三番だった、裕介は高校入学からずっと成績はクラスで一番から三番を維持している。
「私はそこそこでね」
「この前十五番だったっけ」
「そうよ、頑張ってるつもりなのに」
それがというのだ。
「四十人のクラスで十五番」
「平均より上じゃないかな」
「十番以内に入りたいの、けれどね」
それがというのだ。
「それだけ、だからね」
「そう言うんだ」
「部活もレギュラーだけれど最近練習試合とかで思う様に勝ててないし」
「どっちも今一つなんだ」
「それをどうにかしたいのよ」
こう言うのだった。
「もっと成績よくなってどんどん勝てる」
「そうした風にだね」
「努力してるつもりなのに」
果補なりに必死にだ。
「それが出ていない、何か悪いのかしら」
「そうだね、じゃあここは運の要素を入れてみる?」
「運って」
「ほら、運も実力のうちっていうし」
それでというのだ。
「運も備えてみる?例えばね」
ここで裕介は二人が歩いているその右手を見た、そこには大阪を象徴する川の一つ淀川がある。夕方なので川はもう夜の闇の中に消えようとしている。二人は彼等が住んでいる淀川区への帰り道を歩いているのだ。
「何か淀川に人魚が出るらしいよ」
「人魚って川に?」
「そうらしいよ、今ね」
「それ嘘でしょ」
その話を聞いてすぐにこう言った果補だった。
「人魚がいるって。しかも川に」
「いやいや、昔琵琶湖にも出たらしいし」
「そんなお話あるの」
「うん、それでね」
「淀川になの」
「出るらしいんだ、それでその人魚を見たらね」
淀川を泳いでいるそれをだ。
「滅茶苦茶運がよくなるらしいよ、ある人が競馬したら大穴で億当てたとか」
「本当かしら」
「本当かどうかわからないけれど」
それでもと言う裕介だった。
「まあ見たらね」
「人魚が実際にいて」
「運がよくなって成績もテニスもよくなったらね」
「それでよしっていうのね」
「そう思うけれどどうかな」
「そうね」
果補は裕介のそ
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