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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 8
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のちのイタリアリラの語源であり、ラテン語のlibra(天秤)からきていて、ここでは重さの単位を意味している。
「少し待っていてちょうだい、用意してくるから」
少女はそう言うと、ろくに返事も聞かずにロッティの部屋から退出した。
「……大ぼら吹きの小娘め、いくらなんでもそんな大金を用意できるわけがないだろう」
たしかに高貴な身分のようだが、ロッティの提示した金額は莫大な額になる。ジェノヴァでも五本の指に入るような豪商でもおいそれと用意できる額ではない。
どのような国のどのような身分か知らないが、無理に決まっている。
素直に払えませんと認めるのも癪なのであのようなことを言い、帰って行ったのだろう。
「本気で哀れに思うなら、せめて一〇人か二〇人ばかり買って自由にしてやればいいものを」
従者を呼びつけ葡萄酒を注がせる。銀のゴブレットに注がれたそれはブルゴーニュ産の上等な銘柄だ。
「あの娘はなに者だったのでしょう。見たところ良家の子女のようでしたが、ジプシーかなにかの強請り騙りの類だったのでは?」
「さてどうだろうな。しかしあの護衛ふたり、そうとうな手練れであったぞ」
片刃のグレートソードとグレイブを手にした護衛ふたり。妙に没個性でまるで仮面でもつけているかのようにずっと無表情だったが、その挙動にはいっさいの無駄も隙も感じさせなかった。そこいらの破落戸や傭兵などよりもずっと腕が立つ。商人として物だけでなく人を見る目も合わせ持つロッティはそう直感した。
「娘のほうも薄汚い漂泊民とは思えぬ本物の気品がただよっていた」
従者の言うようにジプシーの訪問詐欺であったなら拘束して奴隷を三人増やしていたところだが、とてもそのようには見えなかったし、腕の立つ護衛に暴れられては身が危ない。
だから穏便にことを進めたつもりだ。
さきほど退出した少女が代金を手にして来訪したとの報告を受けたのは、ゴブレットの葡萄酒が三回ほど満ち引きをくり返した、ちょうどそのときだった。
山ほどの黄金を運んできたて庭先に積み上げているという。
「なんだと!?」
半信半疑で庭に出てみれば、そこにはたしかに燦然と輝く黄金の山があった。
「どう、これだけあればたりるでしょ」
「も、もちろんだとも」
「ならさっさとあの子たちの身柄を譲渡なさい」
「ああ、ああ、そうしよう!」
手に取って見ても偽金の類ではない。ずしりと重い重量と質感。商人としての目利きがこれは正真正銘の黄金。それも純金だと判断した。
これだけの黄金はジェノヴァどころかヴェネツィアやピサ。いや、ヨーロッパ中からかき集めてもないだろう。それがいま目の前にあるのだ。
黄金の輝きにのぼせ上ったロッティは金塊を運んできている少女の人足が全員おな
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