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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 8
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する。当初はもっぱら観葉植物として少数が栽培されていたが宝永年間(一七〇四〜一七一〇)から救荒作物として地方では食用として栽培されるようになり『お助け芋』『シロイモ』などと呼ばれた。
「たしか聖書にこんな言葉があったな『ひと粒の麦、地に落ちて死なずば、ただひとつにてあらん。もし死なば多くの実をむすぶべし』と」
「ああ……、それは『ヨハネによる福音書』の一二章にある言葉だ」
ひと粒の麦とは、人間ひとりひとりの意思や努力、生命や行動を指し。おのれの精神力や生命力を惜しまず出し切って、悔いのない、やり遂げた最期を迎えたそのとき。そこには多くの人たちの心に感動や教訓、英知が引き継がれていく――。
だいたいそのように解釈されることの多い言葉なのだが、この剃髪の青年――言うまでもなく賀茂秋芳だ――はおよそ神聖な宗教の精神性とはかけ離れた、散文的かつ即物的なおこないをはじめた。
「ちょっとまってろ、俺がこの麦をみんなの腹におさまるくらい増やしてやる。しかしここいらの土は質が悪いなぁ、土壌を改善する必要がある――」
呪を口にしつつ手にした穀物を地に蒔いてゆく秋芳。
デイドリーム枕くんで最初におもむいた仮想現実世界。モンゴルの侵略に苦しむ南宋の民人を飢えから救ったときに使用したのと同様の穀物生産系の呪術。
草ひとつ生えていなかった荒野から次々と稲穂が芽吹いてゆく。金色に輝く麦は荒野を飲み込み、不毛の大地は黄金の大海と化した。
「これは、ぼくたちは夢でも見ているのか……」
「奇跡だ!」
「……おお、神よ!」
「ああ……、『神の国は何に似ているか。何にたとえようか。それはひと粒のからし種に似ている。ある人がそれを取って庭に蒔くと、成長して木になり、その枝には空の鳥が巣を作る』……」
驚愕の光景を前にして口々に驚きの声をあげ、十字を切る少年少女たち。
「どうだ、まさにひと粒の麦が多くの実をむすんだだろ。これでたらふくパンが焼けるぞ。……だが人はパンだけで生きるものではない――」
このあとさらに「神の口から出るひとつひとつの言葉で生きる」と続く。のだが、秋芳の口から出た言葉はちがった――。
「ビールだ! 神は人にビールをあたえたまわった。さぁ、おまえたち収穫だ!」
北イタリア、ジェノヴァ共和国。
地中海、リグリア海域に面した港湾都市。海洋国家として富み栄え、金融業や商業の中心地であり、ジェノヴァの港はイタリア最大の貿易港として世界に開かれていた。
東西南北の人と物、富と欲望のつどう地。奴隷貿易で巨万の利を得た豪商ロッティの前に予期せぬ訪問者がおとずれた。
「少年たちを自由にせよ、ですと」
「ええ、そうよ。あなたたちがだまして売りとばした子たちを解放なさい」
「だました
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