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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 8
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LALALAッッッ!」

 臓物が宙に浮き、髑髏のような姿になり、けたたましい哭き声を発すると瘴気の風が巻き起こり、颶風が屋内を駆ける。秋芳と京子はとっさに結界を張って防いだが、兇族たちは無防備に巻き込まれた。呪力に対する備えのない哀れな兇族たちはみな頭目とおなじように口から内臓を吐き出し、ことごとく悶死した。

「?????(ボロン)!」

 大日如来の肉髻を神格化した熾盛光仏頂の種子真言が秋芳の口から放たれる。悪しき存在は瞬時に盲目と化すとされる仏の光明。
 悪鬼邪霊にすこぶる効果のある破魔の光がほとばしり、おぞましい霊災を瞬時に修祓した。

「いったいなんなの、これ……」

 京子はのどもとをおさえ、兇族たちの骸から目をそむける。いつの間にか部屋の中の様子も一変していた。黄金も金銀財宝の調度品も料理もない。ろくに家具も置いていない質素な部屋。
 ただ部屋のすみに置かれた香炉からただようかすかな匂いが、血臭をかすかにおさえていた。
 香を使う呪術がある。
 男たちの残暴兇猛な気は隠しようもない。ひとりだけならまだしも、一〇以上の兇族の集団がいれば悪い気が黒煙のように立ち上っているような様子が勘の良い見鬼ならばいやでも気づく。
 この兇族たちが邪教集団へつながる糸の一端になるかもと考えた秋芳は幻覚作用のある香を用意し、隠形して待ち構えていたのだ。
 思い通りに籠絡され、情報を聞きだそうとしたのだが、永遠に口を閉ざしてしまった。

「……こりゃあ呪詛式だ」
「呪詛?」
「ああ、無理やり動的霊災に分類するならタイプ・スペクター、ラルヴァといったところか」

 ラルヴァ。あるいはラルウァイ、ラルバー、ラールウァとも。
 古代ローマに伝わる亡霊の一種。生前のおこないや正しい葬儀ができなかったことにより冥界に行くことができず、地上をさまよっている悪しき霊。生者を呪い殺すという。
 一種の精霊としても見られていたが、キリスト教以降は悪魔の一種だとされるようになった。意志の弱い者や煩悩を抱く者に憑りつくとされる。その姿は人間の胎児や動物、死体や血液といったおぞましいもので、また一瞬たりとも同じ姿にとどまることもないとも。    
 また、処刑された罪人からただれ落ちた血液や精液、女性の経血、夢精によって放出された精液といったキリスト教的に汚らわしいものから発生するともいわれる。

「こいつら、呪にかけられていたな」

 呪術のなかには限られた条件が満たされた場合にしか発動しないものがある。相手に対してなにかを呼びかけ、相手がそれに返事をしたときにのみ発動する。といったもので、そうした条件のひとつが約束を破る≠セ。
 術者となんらかの約束。見たことをしゃべるな、などの約束を交わし、それが破られたとき術者はそれを
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