第一章
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舞台で注意すること
東梅田七瀬は劇団に所属している、その為か演技力は相当なものでまだ中学生ながら地元のテレビ局のドラマに出ることもある。
だがその七瀬がいつも仕事前に聞くことがあった、それは何かというと。
「服はスカートですか?ズボンですか?」
「今度の役のよね」
「はい、何ですか?」
「どっちでもいいわよ」
劇団の先輩が七瀬に答えた。
「別に指定ないから」
「わかりました、じゃあズボンでいきます」
七瀬は真剣な顔で答えた。
「そうします」
「何か七瀬ちゃん指定なかったらズボンよね」
着る服はとだ、先輩はズボンにするという七瀬にこう聞き返した。
「そうよね」
「はい、そっちの方が好きなんで」
「だからなの?」
「いつもズボンなんです」
「そうなのね、けれど学校じゃ」
「制服ですから」
この返事はもう七瀬の中で決まっていていささか事務的に返した。
「それで」
「スカートなのね」
「学校にいる時は」
「そうなのね、やっぱり」
「はい、ただ普段もです」
「ズボンなの」
「それでいます」
そうしているというのだ。
「大抵は」
「本当に衣装でスカートって指定がないと」
「ズボンです」
こちらを穿いているというのだ。
「そうしています」
「好きっていうけれど」
「スカートもですか」
「いいと思うけれどね、私は」
「それでもなんです、私としては」
「ズボンなのね」
「そっちじゃないと困ります」
こうも言った七瀬だった。
「どうしても」
「?困るって?」
先輩はその七瀬の言葉に妙なものを感じてすぐに聞き返した。
「何が?」
「あっ、何も」
自分の失言に気付いて咄嗟に言い繕いにかかった、舞台で演技をしているだけあって表情には出していない。ここでも演技をしたのだ。
「ないです」
「そうなの?」
「はい、気にされないで下さい」
「だといいけれどね」
「とにかく私はズボンが好きで」
言い繕ってからあらためてこう言ったのだった、取り繕ったものをさらに覆って隠す為にこう言ったのだ。
「それで履いてるんです」
「それだけ?」
「はい、それだけです」
こう言う七瀬だった、とにかくいつもズボンを履いていた。そして制服のスカートの時もであった。
体育の授業の前に着替えるともうそこから体操服の半ズボンが出て来た、クラスメイト達はその半ズボン姿の七瀬を見て言った。
「また?」
「またなの」
「スカートの下に半ズボンなの」
「体操服の半ズボン穿いてたの」
「そうしてたの」
「こうしてると楽じゃない」
にこりと笑って言う七瀬だった、上着のブラウスを脱ぎつつ。
「そうでしょ」
「まあね」
「スカート脱いだらすぐ
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