第一章
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大激怒
南森玲子は姉御肌で面倒見がよく曲がったことが嫌いな性分だ、その為女子サッカー部でもクラスでも家でも頼りにされているが。
その反面だ、こうも言われていた。
「怒ると怖いんだよな」
「滅多に怒らないけれど」
「もう手がつけられないから」
「台風みたいになるから」
「怒らせたら駄目だな」
「絶対に」
こうしたことも言われていた、それは彼女の弟三人も同じでだ。いつもよく面倒を見てもらって可愛がってもらっているが。
「姉ちゃんだけは怒らせない様にしような」
「ああ、俺達もな」
「本当に怒ったららどれだけ怖いか」
「親父とお袋よりずっと怖いからな」
「もう雷がどれだけ落ちるか」
「気をつけないとな」
家族ですら注意する位だった、そうした彼女だったが。
大会の一回戦の決まったと顧問の先生に言われその相手の高校の名前を聞いてすぐに言った。
「あの、その高校は」
「ええ、気をつけてね」
女子サッカー部の顧問の先生は玲子に真剣な顔で答えた。
「あの高校柄が悪いから」
「しょっちゅう問題起こしてますよね」
「男子も女子もね」
「大阪でも有名な不良校で」
「スポーツでも何するかわからないから」
そうした高校だからというのだ。
「今回も出来るならね」
「あたりたくなかったですね」
「けれどあたったからにはね」
「仕方ないですね」
「怪我がない様にね」
相手のラフプレイを受けてだ。
「そうして勝っていきましょう」
「わかりました」
こう答えるしかない玲子だった、そしてだった。
その試合がはじまったが危惧された通りだ、相手校は危惧された通り次から次にラフプレイを行った、それでこちらの選手は何人も痛い思いをした。幸い怪我人は出ていないが審判の目を盗んでのそのプレイにだ。
玲子は怒りを感じてだ、チームメイト達に言った。
「思っていた通りよね」
「ええ、ふざけたことしてくれるわね」
「本当にね」
「もう手が出る足が出る」
「審判さんの見えないところでね」
「徹底的にやってくれるわね」
「腹立つわ」
玲子はこちら側を不敵な笑みで見ている相手を見据えて言った。
「お陰で攻めていてもね」
「攻めきれてないわね」
「お互い得点なしで前半戦終了よ」
「こんなのだと後半もね」
「一体どうなるか」
「わかったものじゃないわね」
「どうしてやろうかしら」
玲子は怒った顔で言った。
「ここは」
「いや、怒らないでね」
「玲子ちゃん怒ったら凄いから」
「乱闘とかしないでね」
「やったら終わりよ」
「出場停止ものだから」
「わかってるわよ、けれどどうしてもね」
腹立ちが収まらない顔だった、明らかに。
「やり返してやりたいわ」
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