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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 8
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べきことをしたんだ。京子を救ったんだ。だからか。だから、もういいのか)

 大切な人を守れた。だから未練はない。

「帰ってきて! かならず帰ってきて、秋芳くん!」

 ――!

(いや、まだだ。まだ死ねないな!)

 そう。あのとき、京子は帰ってきてと言った。
 秋芳の帰還をのぞんだ。
 秋芳の帰還をのぞんでいる。
 ならば、帰らなければならない。
 このようなところで死ぬわけにはいかないのだ。
 心の深奥から闘志がわいてくる。
 気力充溢。
 剣をにぎる手に力がこもり、斬撃はその勢いと激しさを増し、刺突の速さと鋭さが冴え渡る。
 そして、ついに――。
 悪魔の身に異変が生じた。
 【ライフ・アップ】がかかっても傷がふさがらない。
 それどころか傷が大きくなり、治したはずの傷まで開いている。
 皮膚がはがれ、骨が折れ、出血性の障害が体内外の各器官で生じ、全身に壊死が広がっていく。
 治癒限界。
 ごく短期間に法医呪文による肉体治癒を何度も繰り返すと、とある施術回数から治癒の効きが極端に悪くなり、さらには肉体の自壊に至る状態をさす。
 繰り返される過剰回復が生体組織活動に深刻な障害をあたえるために起きる現象で、戦いに身を置くだれもが『癒やし手の手をつかむ死神』と恐れる。
 この悪魔はカルサコフの肉体を触媒に受肉した存在。星幽体をした、概念が形をとった悪魔とはちがい、この世界の法則に縛られている。肉体の枷に囚われている。
 肉体をもった存在ならば、治癒限界があるはずだ。
 そう考えたゆえの【ライフ・アップ】連続使用。
 秋芳の予想はあたった。

「UGAAAaaaッッッ……」

 もはや手をくだす必要はない。
 カルサコフだった悪魔は三分と経たないうちに、死滅した。
 ウェンディが秋芳のもとへ駆け寄る。

「や、やりましたの……?」
「ああ、もうこいつは生きていない」
「勝ちました……、勝ちましたわ!」
「……《群れなす雷精よ・疾く集え・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 なにを思ったのか、秋芳はなにもない空にむかって太い雷光を放った。

「ひゃんっ!? な、なんですの、いきなり?」
「いや、だれかに見られている気がしたんでな」
「はぁ?」
「そんなことより、まだ動けるか?」
「とうぜん、動けますわ。魔晶石だってまだこんなに」
「ならけが人の救助だ。こいつのせいで街中に負傷者があふれているぞ」
「力なき人々を守り、助け、癒すのも魔術師の務めですわ。……まずは、あなたを癒さないと」
「不要だ。この程度の負傷と不調なら活剄で回復できる。……というか、あんな方法で倒した後に【ライフ・アップ】を使うのはなんかいや」
「ま、まぁたしかに」
 
 秋芳とウェンディはみ
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