シーホーク騒乱 8
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を自身ではなく悪魔にむかって使用した。
悪魔の身に刻まれた傷のひとつがふさがる。
「な、なにをなさっていますの!?」
恐怖で混乱したのか悪魔にあやつられでもしたのか、秋芳の行動にウェンディもまわりの人々も困惑した。
「俺は血迷ったわけでも悪魔にあやつられたわけでもない! みんな攻撃の手をゆるめるな、今は俺を信じろ!」
「…………」
ウェンディをはじめ、その場にいた人々は秋芳を信じた。
いや、賭けた。と言ったほうが近い。
「《天使の施しあれ》!」
猛然と攻撃を繰り出すいっぽう、相手を回復させる秋芳。
自身の血は流れ、体力と魔力が失われていく。
(死ぬかな)
機械的に身体を動かしつつも、頭の片隅にそんな考えが生じる。
(万魔を祓い、千妖を降し、百鬼を縛り従える。陰陽師たるこの俺が異国の地で動的霊災に負けるのかよ)
死の予感を感じたことは今までにも何度もあった。
葛城山で手持ちの式神をすべて一言主に複製されて戦闘になったとき、京の街で牛頭天王の率いる百鬼夜行に遭遇したとき、夜の鞍馬山で魔王尊と相対したとき。
(あと、それと――)
陰陽庁で十二神将を相手に戦ったとき。
(さすがにみんか強かったなぁ。……んー、なんで俺は陰陽庁にカチコミしたんだっけ?)
ひとりの少女の姿が脳裏をよぎる。
栗色の髪をアップにし、毛先をはらりと流している。ぱっちりとした瞳に、長いまつ毛。ローズピンクの唇。
キュートな美貌やバランスのとれたスタイルはファッション誌のモデルと言われても、すんなり納得しそうな、そんな美少女。
約束の時間が過ぎた頃、ひとりの少女が待ち合わせのカフェに颯爽と入ってきた。
その瞬間、客の視線が一斉にそそがれた。
白のブラウスと黒のパンツというラフな身なりでも、長身からファッションモデルのオーラがただよう。
「おまたせ!」
はち切れそうな笑みを浮かべて声をかけてくる。
雲間から陽光がさしこむような笑顔に秋芳は自分の恋人がたいへんな美人であることをあらためて確認した。
(京子……)
双龍塔――地脈を流れる龍脈から気を吸い上げ、あらゆるエネルギーに変換する呪術技術の粋をあつめて造られた風水機構。
その塔の人柱にされた京子。
彼女を助け出すために自分は十二神将の守る陰陽庁に戦いをしかけた。
そして、勝った。
京子を、最愛の人を守ることができた。
(だが、その時の戦いの余波で生じた時空の歪みに俺は吸い込まれて、こっちの世界に来たのか……)
妙な安堵感。
いそいでもとの世界に帰るつもりにならない気持ちの正体に気がついた。
(ああ、俺は、なす
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