暁 〜小説投稿サイト〜
ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 8
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
れた。

「uuuuu……、コ、コロぉして、クレぇぇぇ。たノム」

 目や口から薄桃色の体液を流し、わずかに残された人であった部分が、カルサコフの首が哀願する。
 悪魔になった者を救うには、肉体を破壊する。殺すことでしか救えない。
 
「いいいィィィたぁい、いたいいたいいたいイタイくルシィIIIいヤだぁぁあぁぁぁァァァ――《爆炎よ・障壁となり・燎原を走れ》――aaagaaaころしてころしてころしてコロシテコロシテたのむぅぅぅコロコロコロ――」

 自在に操作することが可能な炎の壁を生み出す【フレア・クリフ】。
 灼熱の炎が猛速度で床を駆けた。
 後方から銃や魔術で応戦していた人たちが灼熱の炎壁に飲み込まれる。

「くっ、《清き水よ―》! 《冷たき氷よ―》!」

 ウェンディが手持ちの水晶石や氷晶石を使うことで防護壁を展開。なんとか消し炭になるのはまぬがれたが、多くの人が火傷を負った。
 悪魔のたったいちどの呪文で、人間側の前衛と後衛は甚大な被害を受ける。

(このぬるぬる野郎に致命傷を負わせるには……。この方法は、使えるか?)

 意を決した秋芳が攻撃の手を強める。
 龍が尾を払うが如く人体の急所である両の向骨を斬り払う瞬撃《龍尾下閃》。
 足を軸に回転を繰り返し、その遠心力を利用して移動回避しつつ斬撃を放つ《風旋撩刀》。
 襲い来る猛虎の牙を模した、強烈な斬り落とし攻撃《落虎牙劈》。
 龍が天に向けて放つ咆吼の如く天地を揺るがす壮絶な刺突《天吼前刺》。
 獅子奮迅、疾風怒濤、驍将疾駆、闘志豪壮、古今無双、八面六臂の猛攻撃。
 ありったけの絶技の数々を繰り出した。
 触腕の表面に次々と裂傷が増え、三本の触腕のうちの一本には半分近く切り裂く傷をあたえることができた。
 だが攻めに集中しているぶん、どうしても守りが薄くなる。
 大きな痛手を受けぬよう、なんとか致命傷は避けているが鞭のようにしなる触腕がかすめ、傷ついた場所に黒くにごった血がにじむ。
 赤ではない。どす黒い、血が。
 悪魔の身体を濡らす粘液には強力な呪詛や魔術毒が込められている。
 秋芳は気を廻らすことで解毒。除去できなかった分を体外に排出しているのだ。
 易筋(ヨーガ)と気功(プラーナヤーマ)。
 拳法(メイ・パヤット)とともに達磨大師によって天竺から中華に伝えられたこれらの技術は肉体と精神の完璧な制御を目的とする。
 体内から有害物質を排除する程度のことは秋芳にもできた。
だが、神仙ならぬ人の身には限界がある。
 運動と出血による体力の消耗は裂けようがない。
 秋芳が呪文を唱える。

「《天使の施しあれ》」

 白魔【ライフ・アップ】。対象者の自己治癒能力を増強し、傷を癒す初等法医呪文。
 けれども秋芳は、それ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ