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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 8
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つつまれた無数の髑髏、黒い霧のなかに浮かぶ数百の目や口や鼻、虫と鳥の頭をもった巨大な赤ん坊、コウモリの羽根と無数の腕を持った直立する獅子、山羊の頭部を尻から生やして逆立ちしている無頭の紳士、幾何学的な固まりの集合体――。
 などなどが記録にあらわれる悪魔の姿だ。

「ああああaAAはははhahaha――」

 悪魔の身体に生えているカルサコフの顔が白痴じみた笑い声をあげると、木の根のような足をわさわさと蠢かし、移動をはじめる。
 こんなものが街中に侵入すれば、その被害はリビングアーマーの比ではない。

「こいつを退治するのは俺の仕事だな。陰陽の理をはずれた魔障を修祓する、陰陽師たるこの俺の役目だ」

 たとえもといた世界の陰陽術が使えなくても世界の歪み、霊災を修祓せんとする義務感が秋芳を駆り立てる。

「……ウェンディ・ナーブレス! しっかりしろ」
「うう……」
「逃げるのか、あきらめるのか、ゲロの海の中で溺れ死ぬのか」
「そんなの、ごめんこうむりますわ」
「アーサー・ペンドラゴン、ジークフリート、クリシュナ、ペルセウス、キンメリアのコナン、アンディ・クルツ――。俺の語り聞かせた物語の主人公たちを思い出せ。彼らは絶対の危機の時にどうした?」
「立ち向かいましたわ」
「俺は今からやつに立ち向かう。お嬢を守る余裕はない。だから自分の身は自分で守れ、いいな」
「い、言われなくても……。わたくしだって立ち向かってみせますわ……『我々は貧者に分け与えるために富者から奪う。何人も分け隔てせずに弱者を等しく守る』!」
「その科白は――」
「ロビン・フッド。あなたの聞かせてくれた物語の中の登場人物の言葉ですわ。ただただ奪い、破壊するだけの怪物に、このウェンディ=ナーブレス。退きませんわ!」

 奮起したウェンディが自身に【エア・スクリーン】と【マインド・アップ】をかける。
 自分のためではなく、なにかを、だれかを守るためなら、この娘は実力以上の力を発揮するのではないか。
 とりあえず、立ち直った。
 そう確信したあと、カルサコフだったものへ魔剣を手にして駆ける秋芳。
 そこへ三本の触腕が風切り音をあげて打ちかかってきた。

 ヒュン、ヒュン、ヒュン!
 
 頭、胴、足を同時に――ではなく、微妙に時間差をつけて避けにくくした、狡猾な連撃。
 どのような肉体の作りになっているのか、樽のような身体から生えた触腕のみがグラインダーのように横回転し、接近をゆるさない。

「破亜亜亜ッ!!」

 近づくのに邪魔ならば切り落とすのみ。
 気合いとともに振るった鉄をも切り裂く斬撃はしかし、触腕の表面をわずかに傷つけたのみ。
 
「ぬめりやがる!」

 ゴムのように弾性のある表皮に、いぼから出た粘液がまとわり
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