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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 7
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もおかしくないほどの、異常な昂ぶりを――。
「――オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・ハッタ――」
京子の口から音吐朗々と呪がつむがれ、手に結ぶ印が目まぐるしく変化する。
中央に不動明王。東方に降三世明王。南方に軍荼利明王。西方に大威徳明王。北方に金剛夜叉明王を配した祭壇を前にして、一心不乱に真言を唱えている。
「――オン・アミリテイ・ウン・ハッタ――」
それぞれの仏像から対応した五気が生じている。降三世明王の像から木気がただよい、木生火。軍荼利明王の火気を強め、火気は不動明王の土気を昂ぶらせ、土気は大威徳明王の金気を増大させる。
「――ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カン――」
木、火、土、金、水、木、火、土、金、水、木、火、土、金、水――。
五行相生を幾度も繰り返し、途方もなく強大な霊気が呪力へと変換され、祭壇の間は高密度の霊気呪力にあふれ返っていた。
それでもなお放出される呪力は止まらない。
祭壇の間をおおう結界にわずかな瑕疵でもあれば、その一穴から漏れ出た呪力により周囲は大霊災に見まわれてしまうだろう。
結界の維持、呪力の強化および制御。並の陰陽師が数十人がかりでおこなう修法をたったひとりでこなしている。
儀式に一意専心するいっぽうで、心の中にいるもうひとりの自分が興奮していることを自覚していた。
震える。
そしてゾクゾクする。
たったいまおこなっていることはまごうことなき一流の、高レベルの呪術だ。先日の五龍祭もじゅうぶん高等な儀式呪術だったが、ここまでの高揚は感じなかった。
異様なまでの昂ぶり。身体の芯が震え、血が沸き立ち感覚。
それはこの呪術が陰陽塾で学んでいる汎式陰陽術ではなく、帝国式陰陽術そのものだからだ。
土御門夜光が軍部からの要請で作り上げた禁断の呪術体系。陰陽道のみならず神道や密教、修験道や道教、その他様々な民間信仰といった日本に存在するありとあらゆる呪術を統括し、再編成した帝式陰陽術。
それらはいずれも実戦的で強力な力を持ち、こんにちの陰陽法では禁呪指定されているものが多々ある。
そう、実戦的なのだ。
戦争のために、破壊と殺戮のために創られた近代呪術。
いまの日本では決して使われることのない、使ってはいけないもの。
こわい、おそろしい。
だがそれ以上に惹かれる魅力がある。
この世界でならそれに少しでも触れることができる。はるかな高みを、はてしない頂上を仰ぎ見ることができる。
京子の昂ぶりは最高潮に達した。
死と破壊をまき散らす、禁断の儀式呪術が発動する。
秋芳らが呪術戦をくり広げている最前線より少し離れた元軍の陣。
その南端に一体の巨人が現れた。
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