飛頭蛮
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、特定ってのはね。そういうの重いじゃん。キープは多少ね」
「今泉。俺は今歯ぎしりが出る程、お前が妬ましい」
「お前ら、何をしに来たんだ」
奉が、静かに湯呑を置いた。
「恋バナをしに来たのか、玉群基地を探索に来たのか。ちなみにこの奥には洞窟湖もあるぞ、小さいが」
「えっまじで!?でも寒いからあとにする!」
今泉もだが奉も微妙にテンションがおかしい。珍しくも、この無感動な堕落神がはしゃいでいるのか。本筋に戻そうとして、自ら更に脱線にかかっている。俺が本筋に戻さなければ。
「まてまて…昨日電話で話した通りだ。もう少し丁寧に説明しようか」
「いや、結構…なぁ今泉。その…死んだ草間にそっくりな頭か。それ見た時、どう思った」
今泉は暫く視線を泳がせて、ふと思い出したように俺の方を見た。
「俺さ、霊感あるみたいなんだよね」
「質問に答えろよ、自由か」
つい、俺が突っ込んでしまった。
「んー、だからさー。…あれ、視えちゃったって感じ」
「そういうこと、割とあるのか」
「多くはないけどね。…ただ、今回はあまりに続くしそれに」
草間にそっくりなのが気になってね。そう云いながら今泉は、今日初めて深刻な表情を浮かべた。二つ目の豆大福に手を伸ばしながら、奉は今泉の顔を覗き込んだ。…不思議な風景だ。小さい頃、同じクラスにありながら言葉を交わすことすらなかった、対極の性質をもつ二人が今更、同じ炬燵にあたっている。
「…草間に何か、恨まれるような覚えは」
唐突な奉の質問に、今泉は一瞬身を竦めるが、少し何かを思い出すような顔をして、ゆるりと首を振った。
「―――多分、ないよ。ちょこちょこした喧嘩はあったけど、化けてでる程のは」
「おい奉!」
欺瞞だろ、そんな質問。だって俺達は知っているじゃないか。草間の魂はもう…。
「いいから」
俺を制するように、奉が小声で呟いた。煙色の眼鏡の奥は、やはり伺えない。
「草間に似てるけど草間じゃない…か。なぁ、今泉。そいつは今日も出ると思うか」
「んー…どうだろう。あれ、いつも窓に貼りついてるんだよな。でもこの部屋には窓がないから」
「あるよ」
「えっ!?」「へっ!?」
俺と今泉が同時に叫んだ。お、俺この部屋に20年近く通っているのに、窓があったなんてついぞ知らなかったが!?奉はうっすらと笑いを浮かべ、向かいの壁を指した。奉が示す壁には、取って付けたような天鵞絨の小さいカーテンが下がっていた。
「………へぇ」
うっすらと、今泉の額に汗の玉が浮かぶのを見た。…この異様な閉鎖空間に入り込んだとき、今泉は戸惑いもしたが、同時に少しホッとしたような表情を浮かべていたのだ。それはやはり、この部屋に窓がないからだろう。
だが、この部屋にも窓があった。
『窓』を凝視したまま口を噤む今泉、そんな今泉を、興味深げに
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