飛頭蛮
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んだ」
「―――二束三文の値付けだったからねぇ」
古い扉が、内側から押し開けられた。
煙色の眼鏡に土偶の赤光を宿した奉が、俺達を見下ろしていた。
「……志ほ瀬屋の豆大福は、持って来たんだろうねぇ」
開口一番、それか。
「うんばっちり♪」
軽いな今泉!!
「志ほ瀬屋なら、羊羹が旨いのに。これ、俺のオススメの塩羊羹も入れといたから!」
そう云いながら今泉は、奉に重い紙袋を差し出した。
「猫も杓子も塩ブームだねぇ…」
ぶつぶつ云いながらも、奉は満更でもなさそうだ。さすがのコミュ力。…というより、気のせいだろうか、今日の奉は少し機嫌がいい気がする。
「お茶をお淹れしました」
奉の背中越しに、澄んだ声が聞こえた。奉はドアから静かに身を引く。入口の洞よりは少し明るい広間の真ん中に設えた炬燵の上で、茶碗に4杯分の湯気が立ち昇っていた。
紺色のワンピースに身を包んだ、きじとらさんが広間の奥に控えていた。
「わぁ…秘密基地にメイド付きかよ金持ちすげぇ!」
今泉が迷いなく広間に飛び込んだ。
「ここも本ばっかだな。…少〜し、あったかい…かな?」
入口の洞のように本が無造作に壁に沁みこんでいるわけではないが、この広間も本棚で埋め尽くされている。恐らく最初はドーム状の洞だったのだろうが、長い時間をかけて『誰か』が正方形に成型したのだろう。目的は勿論、居室を本棚で埋め尽くすためだ。部屋の四方は、岩で穿った据え付けの本棚で囲まれている。
今泉が『少しあったかい』などと云ったが、それはあくまで入口の洞と比較しての気温差だ。一応、電気を引いているのでエアコンも入るのだが、いかんせん冷たい岩の洞に無理矢理穿った居室だ。エアコンが頑張って暖める速度に負けぬ速度で冷える。
「すげぇな玉群基地。こんな岩、どうやって削ったんだよ。窓があれば云う事なしだよなぁ」
「そのうち天井あたりに、あかり取りの窓を穿とうと思う。北極星が視える角度でねぇ」
「よせよ奉…ここマジでファラオの墓みたいになるぞ…」
くっくっく…と小さく笑い、奉は炬燵の上座に戻った。
「墓みたいなもんよ。この下に何体の『奉』が眠っていると思う?」
「まじか初耳だよ!!…何でそういう大事なことを雑にするんだお前は!普通に墓に葬れよ!」
「玉群の墓に葬られるわけにはいかないだろう」
「何の話してるんだ?」
早速、炬燵に入り込んで茶を啜っていた今泉が、豆大福を頬張っていた。いつの間にか、きじとらさんが茶菓子を用意してくれていたらしい。俺も炬燵に肩まで潜り込んだ。
……俺は、酷く深刻な霊現象に関する相談を受けていたのではなかったのか。これじゃ楽しいお泊り会じゃないか。
「可愛いね、あのメイドさん。…狙っていい?」
「お前そればっかりだなぁ…彼女とかいないのかよ」
「んー
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